幽霊と結婚した友人

海外では「冥婚」と言って、未婚で亡くなった人と生きている人が婚姻するという風習があるんだそうです。日本でも一部の地域に伝わっているらしいですが。
男友達に、冗談半分で冥婚をしたことでとんでもない目に遭った人がいるので、今回はその話をしたいと思います。

男友達のA男は、元々ある冥婚の方法を真似して、自分の髪の毛と写真を封筒に入れて道に置いたのだそうです。
A男は当然、生きていますし、拾うのも生きている人なので、もし封筒を拾った人が男性なら無視、女性ならば声をかけて、タイプならLINEでも交換しようと考えていたのだとか。
A男が道に封筒を置き、物陰に隠れて様子を伺っていると、興味本位で拾う人は男女ともにそこそこの数がいたものの、大体の人が中身を見て気味悪がって封筒を投げ捨てて行きます。
気味悪がっていなくても、A男が物陰から出てきて「実はそれ、冥婚を模したものなんです…」なんて言えば、そこで気味悪そうにして去っていくのだとか。

A男も「まぁ、そうなるよな」と分かっていながらも諦めきれず、あと1人だけ反応を見てから帰ろうと思っていると、とある女性がその封筒を拾いました。
その女性はすらっとした細身の体躯で、身長が高いモデルさんのようだったそうです。
顔もA男好みの美人で、A男はすぐに物陰から飛び出し、「実はそれ、冥婚を模したものなんです…」と事情を説明しました。
すると女性は意外にも面白そうにしてくれて、意気投合した2人はLINEを交換し、その日から交際が始まりました。

私も一緒に話しを聞いていた他の友人達も、「そんなことがきっかけで彼女が出来るんだ」と、不思議がったり面白がったり様々な反応です。
そのうちの1人が「A男の彼女の写真が見たい」と言い出すと、A男も自慢したかったのか、あっさりツーショット写真を見せてくれました。
しかし、どの角度から見ても、目を凝らしても、A男が「彼女とのツーショット写真」だと言い張る画像には、ピースサインをしたA男1人だけしか写っていません。
「A男しか写ってねぇよ」「A男、嘘ついてたの？」と口々に文句を言うと、A男は顔を真っ赤にして「嘘じゃねえよ！俺の隣に同じようにピースしてる女の子が写ってるだろうが！」と怒ってしまいました。
「写ってない」「写ってる」と言い合いになり、とうとうこの場にA男の彼女を呼ぶことになったのです。

A男はLINEで彼女を呼び出したらしく、「もうあと10分で店に着くって」と、言います。
しかし、待てど暮らせど、いつまで経ってもA男の彼女はやって来ません。
結局1時間以上待ってもA男の彼女は来ないし、A男も彼女と急に連絡がつかなくなったことで病みだすし、もうそろそろお店が閉店時間になるというので、その日はそのまま帰ってしまいました。

事態が急変したのは、それから7日後の夜のこと。
A男から「皆に相談したいことがある」とLINEが来たので、あの日A男の話しを聞いたメンバーが集まれるだけ集まりました。

青ざめたA男は皆の「どうしたんだよ？」「彼女と別れたのか？」というからかいの声を無視して、「彼女が人間じゃないかもしれない」と、言ったのです。

友人B「人間じゃない？何、実は彼女は妖怪だったとか？」
友人C「それか、写真に写ってなかったから幽霊？」
A男「…どっちかっていうと、幽霊だと思う」
友人D「幽霊ってそんな、非現実的だよ。本当にそう思ってるの？」
A男「だって、おかしな夢を見るんだよ！俺の夢の中で彼女が首だけになったまま宙に浮いていて、どこまで逃げてもひたすら『私達結婚したのよね、式はいつ挙げるの、赤ちゃんは何人作るの』って言いながら追いかけてくるんだ」
友人E「結婚？2人はもう結婚の話しが出てんのか？」
友人B「出会いのきっかけが冥婚だったからとか？」
友人C「結婚かー、いいなぁ、私も早く結婚したい」
A男「お前ら、からかわないでくれよ！こっちは真剣に悩んでるんだから！毎日、毎日同じ夢を見て…、夢を見る度に逃げる俺と追いかけてくる彼女の距離がどんどん縮まるんだよ。今日は多分、彼女に掴まってしまうと思う。掴まったら俺、どうなるんだろう…」