アリス
投稿者:LAMY (11)
神社のお祭りに行った時、境内の裏手に歩いていく人を見たので付いて行った。
するとそこにも屋台や踊りをやっていて、周りの人たちは皆何かのお面をつけていた。
お金を持っていなかったので親から貰いに戻ったところ、境内の裏に屋台なんて出てるわけないと言われ……母の手を引いてもう一度行ってみたところ、そこには人っ子一人いなかった――。
他にも、愛ちゃんはいくつかの不思議な空間の話をしてくれた。
病室のベッドの下にある梯子、納骨堂の裏にある広場、クローゼットの奥の扉から行ける三角形の部屋。
人に話すと見えなくなってしまうものもあれば、話しても変わらず見え続けるものもあったらしい。
ただ、愛ちゃんが“不思議の国のアリス”でいられた時間はそう長いものではなかったようだった。
「……でも、十歳になった頃からさっぱり見えなくなっちゃったんですよね。
秘密の遊び場がみんな無くなっちゃって、結構がっかりした覚えがあります」
「へー……。けどさあ、頻繁にそんなところに出入りして騒ぎにならなかったの? 周りからすれば、愛ちゃんが急にいなくなったように見えると思うんだけど」
「ああ、大丈夫でしたよ。あっちとこっちだとねえ、たぶん時間の流れ方が違うんじゃないかなあ」
愛ちゃんによると、その“不思議な場所”に入って長い時間遊んでいても、いざそこを出てみると全然時間が経過していないのだという。
一時間とか滞在しても、戻って時計を見ると数分しか経ってない……なんて場合がほとんどだったそうだ。
「すげえな、無敵の秘密基地じゃんそれ。ずっと遊んでても誰にも文句言われないとか、子供にしてみれば最高だろ」
遊び盛りの子供にとって一番の敵は時間だ。
どれだけまだ遊びたくても日が暮れてしまったら帰らなければならないし、その掟に背けば親からのゲンコツが待っている。
そう考えると友達を連れて入れないデメリットはあれど、愛ちゃんくらい肝の据わった子供にとって“不思議空間”は確かに楽園かもしれない――皆そう思ったが、それは他ならぬ愛ちゃんがやんわり否定した。
「あはは。でも、そんなにずっと入ってたことはないんですよね」
愛ちゃんは苦笑いしながら、続ける。
昔のことを思い返しているような、そんなちょっと遠い目をしながら。
「最初はやっぱりすごい楽しいんですよ。
大声出しても怒られないし、時間気にしなくていいし。
でも、あんまり長くいると……だんだん気持ち悪くなってくるんですよね」
ちょっと怖いけど夢のある、不思議な話。
そう受け取って少し和気藹々とした空気になっていたその場が、しんと静まった。
「あ、もう帰らないとダメだなって思うんですよ、その感覚で。あれ今思うと、本能が警告してくれてたのかなあ」
「……警告?」
「帰れなくなるぞ、って」
――あ、これ普通に怖い話だ。
遅ればせながらサークルのメンバーたちは、これがちゃんと怪談会という場にそぐう話なのだと理解した。
読ませるねぇ〜
子供の頃似た経験してるよ。よくある夢との混同かと思ってる。
違う次元行って帰れないのは、まどマギの円さんみたいだなー
明治時代に出版された日本初の「不思議の国のアリス」の邦題は、「愛ちゃんの夢物語」
名前までムリヤリ訳しちゃったそうです。
面白かった
愛ちゃんの夢物語www
夢オチにされとるwww
めっちゃ読みやすくて話に引き込まれる感じがして面白いです!
読み終わってゾワッとしました!
面白かったです!
黄泉戸喫 (よもつへぐい)「あの世のものを食べると、この世に戻れなくなる」というもの。 例え生きたままあの世に行けても、黄泉のものを食べればそのまま黄泉の国の住人にされます。 こと、日本においては、古事記に登場する 伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)の話が有名である。
何故か2ページ目までしか読んでなかった
今日、気が付いて最後まで読んだけど、本能で帰れなくなると警告していた2ページ目で終わらせる方がぞくぞくして完成度が高かった気がする
蛇囚人の話を思い出した
今は文字化けを直すサイトがありますよ。
面白いけど最後のメール警察に突き返されたってのだけ気になっちまった…
画像もいい味出してるw
めっちゃいい
向うに行った場合こちらの世界の時間がほぼ止まっているのに
翌々日にメールが届くの?
いいなぁこの淡々と流れで不思議で恐ろしい結末。
世にも奇妙な物語でやってほしい。
子供の頃は働いてた本能が無くなって現実の世界でも翌々日になっちゃうくらい時間が経っちゃったのかね。
それか呼び込まれて美味しいもの、とかじゃなくてゆっくり休めるベッドとかで思わず寝過ぎて出れなくなった。とか
なかなか怖い
↑文字化け直すサイトは全ての文字化けに対応できる訳ではないよ
その後、愛ちゃんがどうなったのか想像するとまた怖いね
愛ちゃんやっちまったなぁ!
きれいに纏まってていい怪談
そういう部屋で思い出の中の好きな人と幸せに閉じこもってたいな。
帰られへんって・・・・
ためはち
逆に裏の山で遊んでたら1.2時間くらいしか経ってないはずのに家に帰ったら4日くらい経ってたことあったなぁ
誘拐か遭難かみたいなちょっとした大騒ぎだった
電波は出られるんだな
不思議な空間はないけど小学校の頃は登下校で使えてた道が工事とかがあったわけじゃないのにいつの間にかなくなってたことはあったな。親に聞いたらそんな道元知らないし地図にも乗ってなかったんだよね 。
面白く拝見しました。
ところで、ご存知の上でかもしれませんが、向こうに行ってから翌々日にメールが届いたのではありませんね。
「彼女は怪談会の次の日、通学のために家を出たところから行方がわからなくなっているというのだ。」
「メールの受信時刻を見ると、怪談会の翌々日の午前中だ。」
大学生なら通学時間が遅い日もあります。
行方不明後にメール着信という前後関係を明らかにする設定の中では、時間差を縮めた流れにはなっていますね。