家族を傷付けてきた父の最後
投稿者:鍵師 (9)
短編
2022/03/30
02:28
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父が亡くなった時の事です。
父はアルコール依存症を患っていました。
アルコール依存専門病院を何度も入退院を繰り返し、母と私は何度もその対応に追われる日々でした。
姉の家族と兄の家族も遠いところに住んでいたので、父に対する対応は私と母がしていました。
そんな父が急に亡くなってお葬式を急遽開かなくてはならなくなり、姉の家族と兄の家族も来てくれました。
無事にお葬式も終わって、自宅に戻ったその夜の事です。
姉夫婦には当時1歳の息子がおり、その子も連れてきていたのですが、夜、家族がテーブルを囲んでいるとその姉の子が空間に浮かぶなにかを目で追いかけているように見えたのです。
最初は気にしていなかったのですが姉が抱っこしている方向を変えてもある一点の方向に振り返って見るのです。
私は不思議に思い、誰に言うでもなく「この子、何かを見ているね。なんかいるんかなぁ」と言ったのです。
すると兄が「お前もそう思った?俺もこの子なにか見ているような気がするねん」と言ったのです。
私はタイミングといい、お葬式の後といい、もしかしたら父が死んだ後に帰ってきたのかなと思いました。
アルコール依存の末期で自宅に帰ってこられなかった父、家族を顧みず私たち家族を傷付けてきた父ですが心のどこかでは家族の事を気にしていたのかな、そうだったら良いなぁと思いました。
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