これは父と母がまだ結婚する前のお話です。
当時、というか今も父と母が住んでいた所は山の中でコンビニなんかも未だないような山奥です。
その日は冬で雪がちらついてきていました。
父と母は町中に出かけ、父の運転する車で母を家まで送っているところでした。
しかも深夜2時頃
今と違って街灯も無く本当に真っ暗だった。
すれ違う車も無ければ、歩く人も動物さえもいない、民家も無いような山間部。
車を走らせていると、ライトの先にふと人影が写ります。
背中を向けて同じ方向へ歩いている女性だったそう。
多分若い女性で、スカートにハイヒールを履いていて、
昔でいうポシェットをぷらーんぷらーんとさせて歩いていた(母はその場面をすごく覚えていた)
山間部、民家なし、深夜、その時点で違和感しかないシチュエーション、
おかしいなと思いつつ父は通り過ぎ、父は追い抜く瞬間に顔を見たそうです。
生気が無く真っ白い顔をした若い女性でした。
母におかしいから戻ろうと言いましたが、
母が頑として嫌がりました。
絶対に怖いから戻らないでと。
お化けなのか人間か・・・
父には普通に人に見えたそうです。
母がそんなに言うんじゃ・・・ということで、そのまま車を走らせると、
ダムの横の車スペースに1台の乗用車が止まっていて、
ああ、恋人同士が喧嘩して女が車降りたんだなぁと父と母は話したそうです。
無事父は母を送り届け、父も自宅に帰り、次の日は大雪だった。
雪の多い山間部で、ほぼ冬は雪に埋まります。
月日もながれ、春も近づきそんなことも忘れていた頃、
ある日の新聞に、ダムで若い女性の遺体が見つかったと載っていた。
写真にはあの時に見た若い女性の顔。
父はあの時戻れば助けられたかもと言ってましたが、
母はあの顔は生きてるような顔じゃなかった、戻るなんてとんでもないと、
今となってはどっちなのかわからないけどねと
そんな両親が住んでいたところは今でも山深いです。
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