バスの中から見えたモノ
投稿者:玲々 (11)
あれは私が小学生の頃の話です。
私はスクールバスで小学校へ通っていました。
小さな子供が沢山乗り込むスクールバスは各自座席が決まっており、私の指定席は運転席のすぐ後ろの席でした。
その日の朝もいつものその席に座り、窓の外をぼんやりと眺めていました。
その時です。
前方の道路の黄色いセンターライン上に何かがいました。
真っ黒なシルエットのようなその何かは、ゆらゆらと動いて歩いているようで、その場に留まっているようで…不思議な動きをしていましたが、かろうじてその形状で人であることだけは分かりました。
それを普通の人間だと思った私は近くを走る車が一向にスピードを落とさない事にとても驚き、窓の外を二度見しました。
すると、ちょうど近くを通り過ぎていた黒い影は窓のすぐ外に見えて、体の部分は黒い影のままの物体が薄い灰色の作業着を着ていることが分かりました。
前に座っている運転手の背中を見ても普段のそれと変わらずの様子で、やはり乗っていたバスはもちろん対向車もスピードを落とす様子はありません。
そして私が驚いて慌てている間に、バスはその場所を何事もなく通り過ぎてしまいました。
我に返った私は誰かほかの人で見た人は居ないかとバスの中を見回しましたが、バスの中はいつも通りの朗らかな賑やかさを保っているだけでした。
学校についてから友達に話そうとしましたが、私が話す前に興奮した様子で友達が話しかけてきました。
「聞いて聞いて!昨日近くの川に仕事帰りの車が落ちちゃって、朝早くに見つかったんだって!乗ってた人死んじゃってたらしいよ!」
場所を詳しく聞くと、あの例の作業服の黒い影を見た道の横を流れている川との事でした。
しかもその亡くなった人が着ていた作業服は薄い灰色だったという事です。
今考えると、何もわからないままその方はその場を彷徨っていたのかな…と思いますが、当時はただただ怖くて、しばらくはスクールバスに乗った時に窓の外を見ることが出来ませんでした。
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