開かない玄関の扉
投稿者:玲々 (11)
これは私が実際体験した、とても不思議な話です。
私はその日、友達の家に泊まりに行っていました。
久々に会った私たちは夜遅くまで遊び、そのまま午後11時過ぎに友達の家へと帰ってきました。
オートロックのそのマンションはセキュリティもしっかりしており、6階の友達の部屋にたどり着くまで1度鍵で扉を開錠しないといけなかった事を覚えています。
私たちはエレベーターを降り、小さな声で今日楽しかった事を話しながらとても静かな廊下を進んで行きました。
友達の部屋の前にたどり着くと、慣れた手つきで友達が部屋の鍵を開けようとします。
私はその動作をぼんやり見ていましたが、鍵を差し込んだ鍵穴は回ることはなく、友達は慌てて部屋番号を確認していました。
「どうしたの?自分の部屋間違えたの?」と茶化して私が笑うと、友達は「え…あれ…?」と独り言のように呟きながら今度は自分の手に持つ鍵を確認しています。
その表情は真剣に困惑しているそれで、ふざけてやっている訳ではないと悟った私は今度は真面目にどうしたのか聞きました。
すると返ってきた言葉は「部屋も鍵も合っているのに、ドアが開かないの」といった答えでした。
「出かける時は施錠出来たのにそんな事ある訳ないでしょ」と言いながら、今度は私が友達の持つ鍵で扉を開けようとしましたが、鍵は鍵穴に入るものの回りません。
何度か鍵を入れなおしたり違う鍵を入れようとしたりしてみたものの、一向に開く気配のない扉に困った私たちはとりあえずマンションの管理会社に電話してみました。
しかし日付が変わろうとしている時間帯になっていて誰も出る訳がありません。
もう近くの漫画喫茶にでも行って朝まで待つかと諦めかけたその時、カチャンと開錠された音がしました。
もちろん鍵は一番最初に試していた鍵で、ここまで何度となくその鍵穴に入れては開錠出来なかった鍵です。
不思議には思いましたが、その気持ちは開錠できた事による嬉しさで塗り替えられてしまいました。
そのまま喜ぶ友達の後ろについて部屋に入り、玄関で靴を脱いだその時です。
「シャワーの音がする」
確かに玄関からの廊下に面したバスルームから水音が聞こえてきます。
怖くなった私たちは急いで部屋を出て、警察に電話して家の中を調べてもらいました。
確かにシャワーは出ていたものの、結果は室内には誰もおらず、また鍵穴にも何も細工された形跡などなかったとの事でした。
あの時、部屋の中で何があったのか…今となっては全くの謎です。
警察に。