赤いバッグの女とバッグの中身
投稿者:玲々 (11)
短編
2022/01/29
20:52
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その日、私が友達と交差点を歩いていると、向かいから歩いてくる赤いバッグの女性が目に入りました。
腕からかけられたそれは凄く鮮やかな赤色で、その女性が着ている真っ黒のロングコートが更にその赤色を際立たせていました。
人の多い交差点だったので、私はさして気にも留めずに友達とのお喋りに夢中になりながら歩いていました。
すると、何故か段々と足元がフワフワしはじめ、徐々に気分も悪くなってきました。
顔色が悪くなってきた私を心配する友達に、大丈夫だと告げようと友達の方を向くと、その真横を例の赤いバッグの女性が通り過ぎようとしているところでした。
その瞬間です。
赤いバッグから、人の頭が飛び出てきました。
顔はこちらを向いていて、両目は大きく見開かれ、口は今すぐ何かを叫びそうなほどに開かれていました。
私は絶対に目を合わせたらいけないと思い、咄嗟にうつむいて気づかないふりをしながら歩く事だけに集中しました。
逃げるように歩を進め交差点を渡り切り、後ろを振り返った時には赤いバッグの女性はいませんでした。
知らない間に体調不良は治っていましたが、すごく汗をかいていた事を覚えています。
今となって考えると、一切騒ぎになってなかったので多分あれは私にしか見えていなかったんだと思います。
今でもあのバッグから出てきた顔は鮮明に思い出せますが、
何故かバッグの持ち主の女性の顔や髪型は一切思い出せません。
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