夜に響く足音
投稿者:玲々 (11)
これは私が介護施設に勤務していた時のことです。
この施設は病院に併設されており、様態が急変した利用者さんは病院に搬送出来るシステムになっています。
前の夜勤の時は様態が急変した利用者さんが居て、連絡や延命措置で大変だったなぁ…と思い出しながら、その日も1人体制の夜勤勤務をこなしていました。
時計は夜中の2時を指しており、施設内はとても静かでした。
その時です。
廊下の向こうから、片足を引きずったような足音が聞こえてきました。
誰か部屋から出てきて徘徊しているのかと、利用者さんの部屋を1部屋ずつ確認しましたが全員静かに寝てらっしゃいます。
部屋を確認している最中に気付いたら足音は止まっていましたが、確認を終えて戻る途中に再び足音が聞こえてきました。
部外者の侵入の可能性がある以上は無視するわけにもいかず、私は恐怖心に震えながら音の方へと近付いていきました。
こちらに向かって来るかのようなその足音に近付くとぴたっと音は止まり、同時に恐怖心は一切消えて胸が暖かくなるような感覚がしました。
そういえばこの前の様態が急変した利用者さん、足が悪くて片足を引きずったように歩く方だと思い出した途端、その方が延命措置をし続けた私にお礼を言いに来てくださったんだ、と何故か納得というか腑に落ちたというか…不思議とそんな気持ちになりました。
その方は、もうお話も出来ず寝たきりだったのですがちゃんと見てらしたんだなぁと思い、改めて全ての利用者さんには誠意をもって接しないといけないと身が引き締まった夜でした。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。