本の中から出てきた絵葉書
投稿者:希子 (19)
私の町には立派な図書館があり、学生の頃は頻繁に通っていました。本の中からは時々、変わったものが出てきます。前に借りた人がしおりに使って、そのまま忘れたレシートや押し葉をよく見つけました。
ある時、借りた専門書の中から絵葉書が出てきました。紅葉に彩られた滝の写真で、裏には宛名も切手もなし、隅の方に女の子が書くような丸文字で『お土産を持って、会いに行くヨ!』とだけ書いてありました。
これはさすがに、返却する時に司書さんに言った方がいいかな…と思いつつ、その本を横に置いて勉強を続けていたら、玄関の扉がガチャガチャと鳴りました。母だと思いましたが習慣でドアスコープをのぞくと、奇妙な風景が広がっていました。血を流したような夕暮れの光、つばの広い帽子をかぶった女性がうつむいています。その人は両手で、大きな風呂敷包みのようなものを抱えていました。「ね、あけて。私は手がふさがってるから」そんな声が…声だったのかどうかわかりませんが、それが私の頭に鋭く響いて周囲が真っ白になり、私は気を失ったようです。
ガチャガチャ、と鍵の回る音を再び聞いてはっと飛び起きると、今度は母が玄関にいて「どうしたの?」と不安げに聞きました。さっきの不思議な風景の事を話すと、霊感のある母はぴくっとして、「何か変なもの見つけなかった?」と言います。例の図書館の本のはがきしか思い当たらなかったのでそれを見せると、母はものすごい勢いでそれを封筒に入れ、私を引っ張るようにして近所の神社に行き、お札やお守りを収めるところに置きました。
「あまり色々勘ぐりたくないんだけど。あの滝、自殺で有名なところだからね…」
それ以降、本を借りる際は徹底的にページの間を調べる癖がつきました。
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