のぞく女
投稿者:box (1)
しばらくするとまた玄関が開きます。
やはり誰もいません。
さすがに3回目なのでおかしいとは思っていましたが、おそらくは母のいたずらだろうと思っていました。
和室でふたたび転んでいた時です、今度は玄関を入ってすぐ右横にあったトイレが勝手に流れはじめました。
父はすぐに見に行きましたがやはり誰もいませんでした。
そのトイレには小さな窓があったので、そこから母が入って来ていたずらしていると思った父は「いいがげんにしろ、かくれてないで出てこい」と少し声を荒らげて言いました。
もちろん誰もいないので返事もありません。
不思議な現象はその後は特に無く昼になりました。
学校から母が帰って来たので朝の出来事を話し「お前がやったのか?」と聞きましたが母は「違う!私じゃない」と言って本当に知らないようでした。
父は午前中の不可解な出来事を気にしないようにしようと思いました。
昼も過ぎお腹が空いてきた2人は近所のお弁当屋さんに昼ご飯を買いに行きました。
お弁当を買い、アパートに戻って来た2人は6畳の和室で食べる事にしました。
その和室には腰窓「腰の高さに全面すりガラスの窓」があり、母はその窓の方を向き、父はその向いに座りお弁当を食べ始めました。
しばらくし、ふと母を見るとなにか様子がおかしい事に気づきました。
父は「どうした?」と声をかけました。
母は凄く怯えた様子で窓の方を指差しながら「女の人がいる。覗いてる。」と言うではありませんか。
父が振り返ると確かに窓の向こうにモジャモジャっとした髪型をした女が鼻から上だけを出し覗いていました。
その女はすりガラス越しでもはっきりと瞬きもせずじっとこちらを見ているのがわかるほどでした。
父は、あまりにもはっきりとしているので完全に人だと思って、午前中の出来事もこの女の仕業かと思い、その女に注意する事にしました。
ゆっくりと父は畳みにほふく前進をするような体制で転び、小声で母に聞きました。
「まだおるか?」
母は無言で頷きます。
ゆっくり這うように窓の下まで来た父はもう一度聞きました。
「まだおるか?」
母は頷きます。
父は、ゆっくりと窓の下に手を掛けました。
そして母に聞きました。
「おるか?」
母は頷きます。
そして父は勢いよく窓を開け立ち上がり女に言いました。
「コラッ!人の家を覗くな!」
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