不思議な転校生

小学生の時、私のクラスに転校生がやってきました。
その転校生は最初は歓迎されましたが、誰が何を話しかけても一言も話さないので、段々と話しかける人はいなくなり、空気のような存在になっていきました。

私も転校生に話しかけたのですが、ひと言も言葉が返ってこないのでどう対応していいのか分からず、そのうち転校生を気にかけることはなくなったのです。

それから半年ほど経った頃、学校の帰り道で転校生を見かけました。
学校から私の家までの間に神社があるのですが、転校生がその神社に入っていくのを見かけたのです。
神社は地元の人でも寄り付かないくらい不気味が雰囲気があり、時刻はもう17時を過ぎていたこともあって転校生が心配になり、私もそっと後をついていきました。
転校生は子供とは思えない脚力で神社の階段を駆け上がったいくので、このままでは追いつかないと思い、「ねぇ！待って！」と大きな声で声をかけたのです。
私の声にピタリと足を止めた転校生が、こちらを振り返ったのですが、そこにいたのは転校生ではありませんでした。

いえ、確かに見た目は転校生なのですが、顔が見知らぬ老婆のものにすり替わっていたのです。

私が転校生の顔を見て固まっていると、転校生は老婆の顔で「あははははは！」と高笑いして、スーッとそのまま姿を消してしまいました。

私は怖くなって、わき目も振らず走って家に帰りました。
次の日、恐々と学校へ登校したのですが、授業が始まっても、お昼ご飯の時間になっても、転校生が登校してきません。
でも、クラスメイトも先生も気にした様子がないのです。
不思議に思って隣の席の子に「今日、転校生ちゃん来なかったね」と言うと、その子は「転校生ちゃん？誰？隣のクラスの子？」と、言いました。

びっくりして他の子に聞いても、先生に聞いても、誰も転校生のことを知らない態度を取ります。
転校生のことはそのままうやむやになったのですが、転校生は人ではなく幽霊や妖怪の類だったのではないかと思います。
私に正体がバレたので、自分の存在を最初から居なかったものとしたのでしょうか。
もしも私が気づかなければ、転校生は学校で、人の世界で何をしようとしていたのでしょうか。