都市伝説を“特定”したら……
投稿者:峰 (38)
Aくんが帰ってきてから、半月ほどが経った。
ゲッソリ痩せていたAくんは、少しずつ元気そうな見た目に戻ってきた。受け答えも以前と変わらないくらい普通になってきて、冗談を言って笑うことも増えたため、Nさんはホッとしていたそうだ。
ある日、Aくんからドライブに誘われた。
ドライブデートは以前からよくしていたので、Nさんは不思議には思わなかった。
しかし、まだ長時間運転できるほどAくんが元気になったとは思えなかった。
やめた方がいいんじゃないかと言ったのだが、Aくんは「大丈夫、大丈夫」と聞かない。
Nさんは、まあ、あまり遠くに行かなければ気分転換にもなるか……と思い直して、了承したという。
とりあえず、近場の森林公園まで走らせようと言って車に乗り込み、2人はドライブを始めた。
30分ほど走った頃だろうか。
Nさんは、車が森林公園へ行くのとは全く違う道を走っていることに気がついた。
いつのまにか辺りは民家が立ち並ぶ住宅街になっている。
ん?こんな道通るっけ?知らないだけで近道か何かだろうか?
「Aくん、ここってどこ……」
と、Nさんが尋ねようとした時だった。
Aくんが突然、
「ねえ、青い屋根の家って知ってる?」
と、言い出した。
Nさんは、「ん?」と思ったが、その時はまだ特に気にすることもなく、「知らない。何の話?」と聞き返した。
新しい映画とか、流行っている漫画のタイトルかと思ったそうだ。
しかし、AくんはNさんの質問には答えなかった。代わりに淡々とした口調で、
「この辺にさあ、あるんだよね。青い屋根の家がさ。数年前まで人が住んでたんだけど……」と、ブツブツ呟き始めた。
「え?なに?どうしたの?」
Nさんは、Aくんがふざけているのかと思った。
ところが、Aくんを見るととてもふざけているような様子ではなく、至って真顔だった。いや、真顔というよりも、どこかボーッとしたような、ウツロな表情だったという。とにかく異様な雰囲気だった。Nさんが呆気に取られている間も、Aくんはブツブツ呟いている。
「火事だったんだっけ?あれ、強盗だったっけ?とにかくさ、全滅だったんだよね。全滅。おじいちゃんとかさ、おばあちゃんとか、あと、小さい子もいたんだって。5歳だっけな。まだ幼稚園のさ、小さい子だよ、小さい子」
「え、え?何?いや怖いんだけど。どうしたの?」
Nさんはかなり引きながら声をかけた。この時はまだ、半分はAくんの悪ふざけだと思っていたらしい。
前述の通りAくんはお調子者で、変なノリの冗談もしょっちゅう言っていたからだ。
しかし、Aくんの様子はそこからどんどん、変になっていった。Nさんの言葉を借りるなら、それは“ガチ”の感じ、だった。
「真夜中だったからさあ〜、しょうがないっちゃしょうがなかったよね。お父さんもお母さんも、そりゃみんな、ぐっすり寝ててさあ〜、それで、逃げられなかったんだよ。全員死んじゃってさ、そう、死んじゃったんだって。死体なんかさ〜、見つかった時はかなり酷かったんだよね。かわいそうだよね〜?ねえ?」
「え、あの……え?」
「なんかさあ〜、そういう話聞くと、俺もう悲しくってさあ〜、青い屋根の家なんだよぉ〜。青い屋根の家なのにさぁ〜、一家全滅だったんだよ、かなり酷い死体だったからさあ、お年寄りも、小さい子もいてさあ、ほんと、一晩でだよ、かわいそうだよね〜、5歳くらいの、小さい子もね〜、全滅で。青い屋根のさあ、家なんだけどさ〜、かわいそうだよね〜?」
北海道だよね?
特定しました