不思議な結婚式
投稿者:足が太い (69)
最初は、海の向こうに山があるのかと思っていました。
しかし、ゆら~りゆら~りと、ゆっくり左右に揺れているので、山であるはずがありません。
大きな大きな、まるで空に届きそうなくらい大きな影は、ゆっくりと体を揺らしながら真っ直ぐホテルへと近づいてきています。
急いでカーテンを閉めて部屋を出て、フロントへ行くと、そこに居たフロントマンにさっき見たことを伝えました。
「幻覚でも見ているのかと、笑われたらどうしよう」と不安だったのですが、フロントマンは意外にも真剣に話しを聞いてくれて、「それは大海坊主ですね」と、大きな影の正体を教えてくれたのです。
フロントマン曰く、この辺りには昔から、大海坊主と呼ばれる天まで届きそうな大きな影が現れるそうです。
大海坊主は亡くなったもののまだ今世を彷徨う魂を食べる為に海の向こうからやって来るらしく、生きている人には悪さをしないので、カーテンを閉めてじっとしていれば明日には消えているから心配しなくてもいい、と言われました。
フロントマン「最近ねぇ、若い男性が事故で亡くなってね。そろそろ結婚を控えていたらしいけど、無念だったろうね。その男性の魂が彷徨ってでもいるのかな」
私「それって、その男性って、A子さんという女性と婚約していたB男さんという方ですか?」
フロントマン「さぁ、私は隣町の人間だから、詳しくは知らないけれど…」
フロントマンとはそこで話しを終え、部屋に戻ってしっかりカーテンが閉まっているのを確認した後、すぐ布団にもぐって寝ることにしました。
そして、朝日が上ったのを確認してすぐタクシーを呼び、そのままどこにも寄らず真っ直ぐ家に帰りました。
きっと、大海坊主がやってきたのは、B男さんの魂を食べる為なのでしょう。
B男さんは既に亡くなっているならば、A子の結婚式での喪服や新郎を模したマネキンとも結びつきます。
A子も、A子両親やB男両親も、B男が亡くなったことが受け入れられず、あのようなことをしたのではないかと思います。
その結果、B男の魂が成仏できず彷徨うことになったのではないでしょうか。
大海坊主が本当にB男の魂を食べたのか、そうするとA子達はどうなるのか、そのあたりのことは、A子とは全く連絡を取っていないので分かりません。
A子からは結婚式以来、ぱったりと連絡が途切れてしまったのですが、気にかけているとまた良くないことに巻き込まれそうなので…、忘れることにしました。
フロントマン
正義超人ですね