病院での迷子
投稿者:misa (11)
短編
2022/02/05
18:40
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私は某病院で十年ほど看護師をしています。
ある夜の見回りをしていると、青い入院着を羽織った若い女の子が徘徊している所に出くわしました。はて見慣れない子だなと目で追いましたが、ほうっておくわけにもいかないので声をかけ、病室まで送り届けることにしました。
「病室はどこ?教えてちょうだい」
「303号室……」
「え?あそこに入院してるのは八十代のY田さんよ、他に患者はいなかったはず」
女の子の返答に戸惑ったものの夜の廊下で口論するのも気が引けて、303号室に連れて行く判断を下しました。もし違っていたらその時に考えればいいか、と楽観的に構えていたのです。
懐中電灯で廊下を照らし注意深く進んで行くと、じきに303号室のドアが見えてきました。
「ここです。ありがとうございます看護婦さん」
「いやあね、看護師よ」
「すいません、昔の呼び方がでちゃいました」
えっと思った次の瞬間、女の子はスーッとドアをすり抜けて消えていきました。びっくりしてドアを開けば、ベッドに仰向けたY田さんがぱちりと目を覚まして呟きました。
「若い時の夢を見たの。病院で迷子になったら、あなたによく似た親切な看護婦さんが助けてくれたの」
アレはY田さんの身体から抜け出した生霊だったのでしょうか?
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