裏山の柘榴の御礼
投稿者:misa (11)
夏休み、父の田舎を訪れた時の出来事です。
当時の私は小3のおてんばざかりで、裏山に探検にいきました。
しばらく行くと柘榴がなっていました。
ちょうど喉が渇いていたので柘榴をもぎ、赤い実を一粒一粒噛んで汁を飲み干します。
突如として後ろから声がしました。
「泥棒め」
ぎょっとして振り返れば粗末な着物を羽織った女の子がおり、怖い顔でこちらを睨んでいます。
「ど、泥棒じゃないもん。うちの木だもん」
「それはおらの木だ」
「ここはしゆうちだっておじいちゃん言ってたもん、だからうちの木だよ。そっちこそ泥棒じゃない」
むかっ腹を立てて反論した所、女の子は悔しげに俯いてしまいました。
その時になり、女の子がガリガリに痩せ衰えているのに初めて気付きました。
(お腹すいてるのかな?)
なんだか可哀想になり、まだ二粒ほどしか食べてない柘榴を全部女の子にあげました。
「いいの?」
「もういっぱいだから」
女の子は柘榴の実を含み、感謝の笑顔を浮かべました。
「帰りはぐるっと回りこんでいけ」
「なんで?」
女の子は答えず行ってしまいました。
わけがわからないながら素直に指示に従い、ぐるりと山を回り込んで帰宅するなり、両親と祖父母が血相変えて走ってきました。
「よかった、無事だったんだね!」
「地崩れが起きたから心配してたんだよ、裏山の道が埋まっちまったんだ」
もし同じルートで帰っていたら……自分が生き埋めになる光景を思い描いてぞっとしました。
後で祖父母に教えてもらいましたが、うちの裏山は子捨てで有名な場所だったそうです。
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