墓石の上を歩くもの
投稿者:だれパンダ (31)
短編
2022/01/30
21:12
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これは知人の住職から聞いた話です。
知人は仏教系の学校を出たあと実家の寺を継ぎました。ある夜日課の読経を上げている最中、境内に隣接する墓地の方角から声がしました。
そこで知人は罰当たりな悪ガキが肝試しにきたんじゃないかと疑い、懐中電灯を持って様子を見に行きました。
ところが予想に反して若者の姿はなく、蒸した暗闇の中に卒塔婆と墓石だけが沈んでいます。
杞憂だったかと安堵して引き返す間際、知人の目に衝撃的な光景がとびこんできました。
何か黒い影のようなものが墓石から墓石へ、身軽に飛び移っていたのです。
逃げ遅れた若者だと早合点し、咄嗟に懐中電灯を向けました。
「誰だっ!」
太い声で一喝した所影は墓石の上でぴたりと止まり、虚ろな表情で振り向きました。
その顔を凝視した知人は圧倒的な恐怖に駆り立てられ、全速力で庫裏へと逃げ帰りました。
知人が目撃した影の正体は先日亡くなったAさんの幽霊でした。
このAさんは大層な性悪ジジイで近所の人たちと不仲だったのですが、彼が飛び石の如く踏んで歩いた墓というのが、どれもAさんとトラブルを起こした家の所有だったのです。
Aさんは死んでからもまだご近所の人たちを恨んで、墓を足蹴にし続けているのでしょうか。
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