火の玉のごあいさつ
投稿者:だれパンダ (31)
短編
2022/04/05
18:27
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私の母が、子どもの頃の話です。
社交的な性格だった母は、ご近所さんからとてもかわいがられながら育ったといいます。
中でも、アキエおばちゃんというご近所さんと仲が良く、毎日のように遊んでもらっていたそうです。
ある日、母が自宅の2階にある雨戸を閉めようとしたら、どこからともなくゆらりゆらりと何かがゆっくりと飛んできました。
目をこらしてよく見てみると、それはオレンジ色に淡く光る火の玉のようなものだったのです。
驚きはしたものの、なぜか「怖い」とは思わず、じっとその火の玉を見つめていました。
すると火の玉は母の目の前までやってきて、ぐるりぐるりと輪を描くように何度か回り、またゆらりゆらりと揺れながら、住宅街へゆっくりと飛んでいってしまいました。
火の玉が見えなくなっても、しばらく呆然としていた母でしたが、家の電話の音で我に返りました。
電話に出た母の母(祖母)は、電話が終わるやいなや血相を変えて2階に飛んできて、
「アキエおばちゃんが亡くなったって!」
と、言ったのです。
アキエおばちゃんの死に事件性はなく、持病が悪化したことでの急死、ということでした。
母は、あの火の玉はアキエおばちゃんだったと言っていました。
「かわいがっていた私に、最後のあいさつをしに来てくれた」
ちなみに、火の玉が帰って行った方角には、アキエおばちゃんの自宅があったそうです。
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