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不思議体験

足が太いさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

底底底底底
長編 2022/01/25 16:49 4,650view
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職場の人間関係が上手くいかないし、恋人は浮気してるっぽい、信用していた友達には裏切られるし、他にも細かい嫌な出来事がたくさん起きて自暴自棄になっていた私。
「もう、どうにでもなれ」って思いながら、いつも降りる駅を通り越しても電車に乗っていました。

時刻は0時、平日だからか、さすがにこの時間帯は乗客も私の他に2人しかいません。
その2人とは、私の対面の席に座っている人が良さそうな顔をしたおじいさんと、そのおじいさんの隣に座ってる、うつむいた様子のスーツを着た女性。
2人は知り合いなのか、仲良さそうにピッタリくっついて座っています。

(女の人の方は20代くらいに見えるけど……。珍しい組み合わせだな、祖父と孫かな?)

なんてことを考えながら何気なく2人の様子を伺っていると、おじいさんが女の人の耳元に口を近づけて、何か話し始めました。
女の人はピクリと一瞬反応し、顔を上げましたが、またすぐ先程と同じように俯いた姿勢に戻りました。
おじいさんは気にした様子もなく、女の人の耳元でボソボソと何かを呟き続けています。

(何を言っているんだろう、ここからだと全然聞こえないな…)

何を話しているのかちょっと気になりながら2人の様子を見ていると、やがて終点の駅に到着しました。
女の人が先に電車を降りて、おじいさんも追いかけるかのように降りていきます。
私も2人の後に続いて電車を降りると、そこは一度も来たことがない、名前も知らない駅でした。

壁に貼り付けられている駅名が書かれた看板には、「底底底底底底」という風に、延々と底という文字が続いています。
駅員さんはいるけれど人気がなく寂れているし、8月で暑いはずなのに何だか寒気がしてきて、さっさと駅を出てホテルでもネカフェでもいいから泊まれるところを探そうと思いました。

駅員さんに、この駅までの追加料金を払って駅の外に出てみると、目の前には森があり、左右の道は行き止まりになっています。
森と言っても道は舗装されていたので、スマホのライトで照らしながら歩いていってみました。

明かりが全くない1本道で、「幽霊とか熊とか出たら嫌だなぁ」と、少し怯えながら10分程歩いたあたりで、道の脇に立つ看板が目に入りました。
看板には、「この先、底底底底底」と、書かれています。
(また底底底?この辺の地名とかかなぁ?)なんて思いながらまたしばらく歩いていくと、今度は道の脇に8つの大きな岩が並んでいるのが見えました。

縦横2~3mくらいの岩で、何だか不思議な形をしています。
スマホのライトで照らしながらじっくりと岩を観察してみて、恐ろしいことに気づきました。
人間が両手で膝を抱えて、そのまま寝転がっているような形をしているのです。

道はまだまだ続いていますが、(このまま先に進んではいけない)と嫌な予感がしてきたので、そーっと後ずさりをして駅まで戻りました。
1本道なので迷うことなく来た道を戻り、先程の駅に着くと、駅員さんは居ないようですがホームには入れます。
ホームの天井の電気は消えているけれどスマホはまだ充電があるし、充電器も持ってきている。
何より、あの変な森の中にいるよりもここの方が安全だと思い、ホームのベンチに座って始発を待つことにしました。

ベンチに座ってスマホをいじりながら、ひたすら待つこと3時間。
時刻はもう深夜3時を過ぎています。
あと1~2時間も待てば始発の電車が来るかなと思ってふとスマホから顔を上げると、目の前に人の顔がありました。

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コメント(2)
  • お疲れ様です。
    面白かったです。

    2022/01/25/18:43
  • 何時間も森をさまよって駅まで戻ってきた
    女性にあっぱれ

    2023/08/16/06:13

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