呪いの終着点
投稿者:ligy (1)
B君がA君をなだめつつ「何かあったのか?」と訊くと、A君はまなじりを決して口を開きました。
「…実はさ」
重たい口ぶりで話す内容はこうです。
お婆さんが亡くなった翌日くらいから、夜な夜な枕元に不気味な老婆の声が聞こえてくるそうです。
始めは何を言ってるのか聞き取れず、まるで入れ歯を外してフガフガモゴモゴとどもっているような発声で理解はできなかったのですが、日が経つにつれて発音がハッキリとしていきました。
「おまえか、おまえか、割ったのはおまえか」
数日続く老婆の声でノイローゼになったA君は、次第に寝不足になり日中は睡魔に襲われていました。
そして事故に遭った日は、白昼にも関わらずお婆さんの声が聞こえてきて振り返ると、亡くなった筈のお婆さんが般若の形相でA君を睨み付け、追いかけてきたというのです。
A君は存在しないお婆さんから逃げるように走り出し、結果、道路に飛び出して車に跳ねられたのでした。
「……」
その話を聞いた私達はどう返事をしていいのか分からず、沈黙を繋いでしまいました。
A君は「ごめん、寝れてなかったから幻覚だったかも」と空元気に笑うので、つられて私達もぎこちない笑顔を返しました。
A君の話を聞いてから翌日の学校で、C子が泣きついてきたのでどうしたのか訊ねると、「夢にお婆さんが出た」と泣きじゃくっていました。
その後もD子、B君と続きお婆さんの夢を見たらしく、何れも「おまえか、おまえか」と般若の形相で尋問するように問い掛けてくるという内容でした。
その話を聞いた私は毎晩頭まで布団を被り震えています。
あの日のメンバー5人の内3人は夢に出るだけで実害はなく、A君だけが事故にあったのです。
お婆さんはまるで犯人の特定に至っているような気がして、私はノイローゼ気味になっていました。
盆栽を割った犯人に復讐をしたいならどうして私に何もしてこないのか。
どうして私だけ幻聴も幻覚も夢も見ないのか。
生かさず殺さずの平行状態に私の罪の意識が耐えきれなくなっていたのかもしれません。
もしかしたら、A君が見たお婆さんも、他の3人が夢だけで終わったのも、それぞれの罪の意識の差なのかもしれません。
私はいつの間にか真っ暗な空間の中に漂う魚のような浮遊感を覚え周囲を探っていました。
「おまえか、おまえか」
私はハッと顔をあげます。
聞き覚えのあるお婆さんの声が聞こえたのです。
しかし、皆から聞いていた激情を孕んだ声とは違うようで、生前私と交わしていた優しい声色でした。
その声色に安堵した私は、真相を白状してしまおうと振り返りました。
「おばあちゃん、わたし…」
私は言葉を詰まらせました。
振り返った私の目と鼻の先に、目玉が飛び出るほど見開いた鬼の形相で私を睨み付けているお婆さんがいたのです。
読ませるねぇ、面白かった
少し理不尽な気もする呪いですね
お婆さんの気が済んでいればいいけど…
真相を、はっきりと伝え、真摯に謝罪すれば許してくれたのではないでしょうか。
あの日の出来事を、学校の先生やおばあさんに伝え、謝罪していれば、こんな事態にはならなかったのでは?謝罪し、真実を伝えることがそんなに怖いことでしょうか。未だに怯えているなんて。自業自得だろうと思ってしまいます。
逆に私を自己に合わせたのはお前かって言ってみたい
訂正自己× 事故
普通に怖い
般若の形相
他人の一方的な呪いの巻き添え食って子どもを轢いてしまった運転手に同情を禁じ得ない