エリコちゃんとの思い出
投稿者:LAMY (11)
「当時はぜんぜん疑問になんて思わなかったんですけどね。改めて思い返してみると、エリコちゃんとの思い出ってちょっとおかしいんですよ。
まず、教室の中以外でエリコちゃんのことを見かけた記憶がないんです」
記憶の中のおかしな点はそれだけではない。
エリコちゃんが話しかけてくるのはいつもあっちからだったし、何よりエリコちゃんは授業中だろうとお構いなしに席を立って、いつも通りの笑顔で話しかけてきたように思う。
そして自分は当然のように彼女へ応答していて、担任の先生にそれを咎められた記憶はない──。
「イマジナリーフレンドってあるじゃないですか。最初はそれだと思いました」
だが、だとするとおかしなことがある。
稲沢さんには確かに、他のクラスメイトとエリコちゃんについて話した記憶があるのだ。
先に挙げた恋バナの場などでもそうだし、何人かで一緒に遊んでいるときにエリコちゃんがやってきたこともあったと記憶している。
自分の脳が幼い空想に対して都合のいい形で記憶を湾曲している可能性も考えられたが、なんとなく気になって稲沢さんは一人の友人に連絡を取ることにした。
彼(仮に矢田さんとする)とは小学生の頃からの腐れ縁で、目の前の卒業アルバムにもこちらはちゃんと顔と名前がある。
未だに帰省した折には一緒に飲みに行くような仲なので連絡を取るのは容易だった。
果たして電話に出た矢田さんに稲沢さんが質問すると、彼は笑ってこう言ったそうだ。
『エリコちゃんのことなんて、そりゃ覚えてるよ。俺もお前も初恋はあの子だったろ? 確か……』
やはり、あれは自分だけの妄想などではなかったのだ。
稲沢さんはすぐさま卒業アルバムにエリコちゃんがいないこと、そしてエリコちゃんとの記憶に付随する不自然さについて矢田さんにまくし立てた。
しかし矢田さんは『考えすぎだろ』『ホラー作家でも目指し出したか?』などまともに取り合ってくれない。結局そこでは後でアルバムを見てみろと念押しして電話を切ることになったのだったが、数時間後に今度は矢田さんの方から電話がかかってきた。
『アルバム見たけど、本当にいねえなエリコちゃん』
そこから、二人でああでもないこうでもないと可能性を論じ合った。
──エリコちゃんは卒業を待たずに転校してしまっただけ。
──エリコちゃんは病気か事故で死んでしまい、それがショックで記憶から消していた。
──違う学年の子がしばしば自分達のクラスに遊びに来ていただけだった。
どれも違う。
初恋の相手が転校してしまうなんて大きな出来事を忘れるとは思えないし、クラスで亡くなった子はいたが、亡くなったのは男子だったし、アルバムにもその子を追悼したコーナーが設けられている。仮にエリコちゃんが在学中に亡くなっていたとして一人だけ省かれているのはおかしい。
流石に違う学年の子をクラスメイトと勘違いはしないだろうし、何よりこれらのどの可能性においても、エリコちゃんという女の子との記憶について回る不合理は払拭できなかった。
集団ヒステリーの一種だったのではないかという説が一番理に適っているように思われたが、それもどこか釈然としないものが残る。
『座敷わらしみたいなもんだったのかね。あの子』
結局、長電話の末に矢田さんがふと漏らしたこの可能性が正しいのではないかということになった。
非科学的な結論だが悪い気はしない。優しい落としどころだろう。
面白かった
エリコちゃんは、妖怪?
にしては力が強すぎる!
ゾワッとしました
私もエリコちゃんは妖怪なのかなと思いました
百々目鬼?みたいな
凄く読みやすくて引き込まれました
北海道ということは妖精みたいな?コロポックルとか?違うか…
Eee
ここ数年で一番面白い
全員違う姿を描くのかと思いきや‥
まさかの展開ですごく面白かったです
「にんまり」という笑顔の表現は良いイメージにならないので、語り手さんも何かしらの違和感は感じていたのかもしれませんね‥
こ、これは恐い…ガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル
ぬ~べ~!?
ためはち
オチがコワイです
百目
どちらに転ぶかというオチまでの流れ、引き込まれて想像してしまう。めちゃくちゃ上手です。最高
怖すぎる。
一人暮らしなんだけどパキっとか音がしただけでビクビクしてまうがな。
嫌だなぁ
2024年10月19日 こんなに興味深い話、ひさしぶりでした。各々がエリコちゃんの絵を描いている時までエリコちゃんの異形に気づかない、せぇのと、見せあった時、魔法が解けて怪異を目の当たりにするなんて…エリコちゃんはみんなの思い出の中で美しい思い出のままでいたかったはず。
何も悪さしない子なのに、話の流れで怖く感じさせるところがすごい
ゲジゲジみたいに、見た目害虫で実は益虫ってことで