バスに乗りたかった霊?
投稿者:右後ろの人 (6)
その日、私はバスで駅に向かおうとしていました。
いつものバス停でバスを待っていると「おい」と声がしました。
振り向きますが、誰もいません。中年男性くらいの、太い声でした。
変だなぁ。と思っていると、バスがやってきました。私の目の前で停車したのを確認して、乗り込もうとしたところで誰かに背中を押されました。
バス停とバスの間に段差があるので、私は思いっきり足を捻挫してしまいました。思わず振り返りますが、さっきと同じで人の姿はありません。
痛い痛いと思いながら、私はバスに乗り込みます。偶然、一番出口に近い席が空いていたので、足を引きずりながら座りました。
駅についたら、近くのコンビニで湿布でも買わないと……なんて考えているうちに、バスは出発します。駅までの所要時間は、約20分。
……走り出して数分で、奇妙なことが起こりました。背中がやけに寒く、目の前に星がまたたくのです。
足を捻挫したせいかなぁ、とか考える間にも、どんどん具合は悪くなります。吐き気もするし、一度バスを降りたほうが……と思い、停車ボタンを押そうとした、その時。
『○○町前ー』と、いう運転手さんの声とともに、バスの扉が開きます。すると、それまでの具合の悪さが嘘のようにスーッと治ってしまったのです。不思議に思っている間にもバスは走り、やがて目的地の駅前に到着しました。私はバスを降りましたが、多少足首が痛むだけで、気分はすっかり良くなっていました。本当に不思議だなぁ。首を傾げたその時、私はあることに気づきました。
私が最初に「おい」と声をかけられたバス停は「○○病院入口」というバス停だったことに。
もしかして、病院から家に帰りたかった霊が、私についてバスに乗り、○○町前で降りたのかな……とか、考えてしまいました。
怖いというよりほんわかするお話ですね。