壁の黒いシミと白い靄のような何か
投稿者:まりんまりん (3)
あれは20年ほど前、私が中学生の時のことでした。
当時転勤族の父についていく形で、とある市に引っ越してきました。
父の会社は転勤族のために社宅を提供してくれており、私たち家族も提供された社宅で生活することになりました。
社宅は2階建ての一軒家で、これまでアパートやマンションタイプしか経験がなかった私は、今までにないタイプの社宅が嬉しかったのを覚えています。
・・・といっても、喜んでいたのは家の中に入るまでの話。
家の中に入って、子供部屋にと充てられた2階に向かおうと階段を上ろうとした瞬間、これまでに感じたことがない寒気に襲われました。
確かに日が当たらない階段はひんやりとしており、春先には多少寒気を覚えてもおかしくはなかったでしょう。ですが、私の感じた寒気はそんなものではありませんでした。
「視線を感じる」
「何かがいる」
ぞわぞわと背中を這いあがってくる感覚に身震いし、私は勢いのままに階段を駆け上がりました。
そうして階段を上がってしまうと寒気は落ち着いたのですが、階段の方を見るとやはりゾッとする感覚は消えず。
一体何なのかと気味悪がっていた私の目に飛び込んできたのは、階段を上ってすぐの壁に広がっていた黒いシミでした。
まるで壁の真ん中から染み出てきたような不気味な黒は、ただのシミではないと思えるほど不気味なものだったのを今でも覚えています。
それから私たち家族の新しい生活が始まりましたが、階段の上り下りだけはどうしても慣れませんでした。
階段にいるだけで感じる寒気や視線はどんな時でも消えることはなく、その気持ち悪さから常にダッシュで上り下りをするほどです。
しかもこの感覚は私だけではなく母も感じていたようで、「この階段には何かいるんじゃないか」と気味悪がっていました。
けれども父の次の転勤が決まらない限りは引っ越しをすることができないので、私も母も我慢するしかありませんでした(ちなみに父と兄は何も感じなかったようです)。
そんな生活を送り続けて1年ほどした夏の夜、私はついに奇妙な体験をしてしまったのです。
その夜は寝苦しく、冷房をつけていたにもかかわらずなかなか寝付けませんでした。
だけど眠らなければ授業中に眠くなってしまう。何とか頑張って寝ようとゴロゴロ寝返りを打っていた時、急に私の体が動かなくなったのです。
突然の出来事に最初は首をかしげる程度だったのですが、どうやっても体を動かすことができない、声すら出せない状況を理解すればするほど、パニックに陥っていきました。
一体何が起きているのか。まさかこれが金縛りというものなのか。テレビなどの知識でしか知らなかった金縛り現象に、喜びよりも恐怖が勝ってさらにパニック状態になる私。
とにかく必死で周囲の状況を確認しようと頑張ったところ、何とか首だけは動かすことができるようになったので、必死に頭を起こしました。
そして見つけてしまったのは、白い靄のような何か。
私の眠るベッドの隅っこで、まるで体育座りをしているかのようにそれは蹲っていました。
実際に蹲っていたのか、体育座りをしていたのかどうかはわかりません。
そもそもその時の私はなぜ、その白い靄が座っているように見えたのかもよく覚えていません。
ただ何となく直感で、それは体育座りをして蹲っているのだと思ったのです。
ちなみに顔ははっきりわからなかったので、それが男か女か、子供か大人かもわかりませんでした。
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