短気

中学校のときの同級生のＡから聞いた昔話。

Ａには小学校のときにＢというクラスメイトがいたそうだ。
Ｂは頭はけして悪くはなかったがものすごく短気な男だった。
とにかく何かあるとちょっとしたことで怒る。
なんでもないことささいなことでも、つっかかる。
周囲の人間からは「Ｂは短気」「短気といえばB」という
定評まで得ていたが、肝心のBには全く自覚がなかった。
Ａは一度、Ｂから「お前（Ａ）って短気だよなあ」と言われたそうだ。
Ａは（お前が言うか・・）と思ったそうだが笑って聞き流した。
実際、Ａはけして短気な性格ではない。

Aは小学校卒業と同時に親の仕事の都合で引っ越しをした。
そして私と同じ中学校に入学した。
Ｂはそのまま地元の中学校に進学したはずで、Ａとの交流もなくなった。

それから何十年もたち、Ａはたまたまかつて小学生時代を過ごした
街を訪れることになり、かつての友人たちと一杯飲む機会が出来た。
たわいもないが懐かしい昔話に花をさかせていたところ、
ひとりの友人から「Ｂって覚えてるか？あいつ大変だったんだぞ。」
と話を聞かされた。

中学生になったＢだが、その性格は変わらなかったらしい。
ある時、Ｂがあるクラスメイトに

「お前って短気だよなあ」と笑いながら言った。
当然のごとく、言われたクラスメイトは
「いや、オマエのほうが短気だろ」と笑いながら言い返した。

瞬間的にＢは激高し、
「俺のどこが短気なんだよっ！」
と相手に殴り掛かりシャレにならない怪我をおわせて、
相手は後遺症が残る体になってしまった。
Ｂはそれが問題となり退学・転校となったそうだが、
実は転校ではなく少年院送りになったという噂もあるそうだ。

Aは「あのとき俺が言い返していたら」と冷や汗をかいたそうだ。