好きな人の家
投稿者:ジュリー (62)
私が20代で社会人だった頃の話です。
職場で好きな人ができ、「家はどの辺ですか?」と彼のことについて質問することがありました。
決まって「自転車で20分程度の場所です」と適当な言い回しでかわされるため、彼の家を突き止めたいという気持ちが湧きました。
彼が帰宅する時間は空も真っ暗で、冬だったためすごく寒かったことを覚えています。
待ち伏せて追いかけるということをし、自分でもヤバいことをしているなと感じていました。
彼の後をついて行くこと数分。暗闇の中に鳥居が現れ、次は墓地、大きな寺、そして電気の消えかけた暗い団地。
彼は静かにその中へ消えていきました。
あまりにも不気味で気味が悪く、焦って帰ろうとしましたが帰り道が分かりません。
母に電話し、なんとか家に着きましたが、怖かったという記憶しかありません。
後日改めて通ったはずの道を辿りましたが、鳥居も墓地も寺もなく。
交差点やリサイクルショップ、コンビニなどの明るい店しかありませんでした。
私の自宅にも近いはずの彼の家。
あんなに不気味なところがあったのかと驚く気持ちとと共に、今もどこをどう通ったのか分かっていません。
気軽な気持ちで追いかけたのですが、今となっては後悔しかありません。
彼も自宅の位置を頑なに言わなかったのは何か理由があったからとしか思えないです。
現在仕事も転職し、彼とも疎遠になりました。
今でもあの不気味で異様な光景は目の裏に焼き付いて離れません。
こっそり追いかけるのちょっと怖いけど不思議な話だ…