レイトショーでの不思議体験

数年前に公開された某ホラー映画を、映画館で観に行った時の話です。

実はこの映画を観たという人たちの間で、不思議な体験をしたという報告が多く寄せられているそうです。

私はそんな事情は何一つ知らず、ただただ純粋に楽しみにしていただけでした。

仕事帰りに寄ったその映画館は、レイトショーというのもあり、ガランとして客席はパラパラの状態でした。

人が隣にいると落ち着かない性分だったので、これはありがたいという思いでした。

映画が始まり、ワクワクしながら鑑賞をしていると、あるシーンが流れ始めました。

そのシーンとは、主人公の男がシャンプーをする時に起こる怪異を描いたものでした。

私はこの映画の原作をすでに読んでいたので、何が起こるのか知っていたのです。

なので役者さんがこの後どんなリアクションをするのか、ドッキリを観るような感覚でニヤニヤと笑みを浮かべながら観ていました。

役者さんがシャンプーで頭を洗おうとすると、鏡に「しゃんぷう」と浮かぶシーンです。

きたー！と思ったその瞬間、私の鼻腔にほのかな香りが漂いました。

ほわ〜んとしたその香りは、まさしくシャンプーの香りでした。

「え？何？映画館の演出？」と思い、自分の周囲を確認すると、席には誰もいなかったのです。

これはおかしい…と思った瞬間、私の横の通路を白い服を着た若い男がダダダっと走り抜けるのを確認しました。

その後、映画を観ている最中、なんどもその白い男が私の脇を走り抜けていくのです。

だんだんイライラして、アイツは何度便所に行ってるんだ？と思ったのですが、そもそもどうやって席に戻ってきているんだ？という事実に気付き、驚愕しました。

5回、6回、それ以上外に出ていく姿を確認してるのに、戻ってきた姿を一度も見ていないのです。

この日はその後何も起きませんでしたが、不思議な体験をした一日でした。