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心霊

わたあめさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

借金を返しに来るKさん
短編 2021/09/08 17:24 1,279view

わたしが小さな運送会社でアルバイトをしていた時の話です。

わたしは小さな事務所で、伝票や書類整理などを担当していました。小さな会社だったので、ひとりで作業をすることもありました。作業をしているとき、時々妙な足音がきこえることがありました。普通の足音とは少し違う、ずずー、ずさー、と片足を引きずるようなリズムの足音です。誰なんだろう、と思って気になっていましたが、足音の主はずっと不明でした。

ある日、足音がした後に、事務所のドアがばたん、と開きました。おかしいなと思ってドアのところへ行きましたが、誰もいません。変だなとは思いましたが、風で開いたのかもしれないし、誰かが開けて去っていったのかもしれない、と思い直し気にしないようにしました。そんなことが数回ありました。

アルバイトにも慣れてきた頃、社長の奥さんが手伝いに来てくれて、ふたりで事務作業をしていると、またずずー、ずさー、というあの足音が聞こえてきました。「あ、この足音!よく聞こえるんですけど誰なんですかね?」と社長の奥さんに聞くと、社長の奥さんが「あー、聞こえちゃう人?そっかー…」と言って黙り込んでしまいました。急に怖くなって「どういうことですか?」と聞くと、「Kさんよ、亡くなったの」というのです。

社長の奥さんによれば、Kさんは運送中の事故で足を負傷し、しばらく仕事を休むことになったそうです。その時にお給料を3ヶ月分ほど前借りし、入院費用も会社から借金していたとのこと。そして、怪我が治る前に交通事故で亡くなったのだそうです。そんなKさんが、会社にお金を返すために時々事務所へやってくる。Kさんの足音を聞いている人は会社に何人もいる。聞こえる人たちの間では、「あーまたKさんが来た」と当たり前になっているとのことでした。

その後も何度かKさんの足音を聞きましたが、不思議と怖くはなかったです。Kさんがいいひとだったからかもしれません。

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