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特別投稿

礎吽亭雁鵜さんによる特別投稿にまつわる怖い話の投稿です

BAR INFERNO/Bottle 2 盗癖と刺青
短編 2026/09/22 21:13 33view

それにしても昨今は本当に治安がよろしくないですね。
私がもっと若かったころももちろんこの辺りの治安は悪かったですが、なにかその悪さの方向性が変わっているんですよねぇ。
あの頃は路地の裏でも表でも喧嘩や一方的な暴力は日常茶飯事でした、しかし今はそういうのはだいぶ減りましたねぇ。
・・・ええ、街のお行儀が良くなったわけではないですし、そういった方々が減ったわけでもないですよ。
ただ彼らも馬鹿ではないので、割に合わないことがわかってきたんでしょうね。
やはり暴力を伴うと警察は黙っていませんからねぇ。本当に日本の警察は優秀ですよ、繁華街なんてカメラだらけですから、まあまず間違いなく捕まります。
とどのつまり暴力は実行すると損なんですよ。
なのでその手の方々は今は暴力をできるだけ使わずにシノギをしているのです。

また暴力の必要性が減ったことで女性による犯罪も増えてきていましてね。
昔はこの辺りで女性の犯罪といえば美人局でしたが今は盗みが多いですね。
飲み屋やバーで仲良くなったフリをして近づき、隙を見て財布を盗むというシンプルな手法もあれば、相手の飲み物に睡眠薬を入れて昏睡させてから盗むという手法まであるみたいで、こんなことされたら女性不信になってもおかしくないですよねぇ。

え?うちのバーは安全かって?ご安心ください。私もそのような輩が来店した際は目を配っておりますし、この店でやる火遊びの代償は高くつきますからねえ。

さて、この店の常連だった麻里奈さん(仮名)という若い女性がいました。どこかの地方から上京してきたらしいのですが東京の煌めきに当てられたのか不相応な散財が多く、リボからカードローンそしてサラ金と効率的に負債を増やしていき、最終的には盗みを働いて返済に充てておられました。

そんな麻里奈さんがご来店された際に私に相談に乗ってほしいと話しかけてきたんですよ。
「ねえ、マスター、ダメ元で聞くんだけど霊能者とか呪いに詳しい人って知らない?なんかちょっとやばいっぽくて、お祓い?的なことできる人を探してるんだけど・・・」
「おや麻里奈さん、手癖の悪さはお祓いでどうにかなるものではないと思いますが」
「意地悪言わないでよ!いや、マジで呪われたっぽくて、見てよこれ!」
そう言って麻里奈さんは右腕の長袖をめくって私に見せました。そこには目玉のマークの刺青が3個彫られていました。
夏にご来店された際には無かったと承知しています。
「3個・・・の目玉の刺青ですか?」
「刺青なんだけど刺青じゃないのよ。私こんな刺青彫ってない、というか刺青なんて彫ったことないの!」
「じゃあなんで刺青が?」

「こいつらが勝手に浮き上がってくるのよ!実はこの前、飲み屋で獲物探してたときにね、割と金持ってそうなおじさん見つけてさ、上手いこと仲良くなって話してたんだけど、このおじさんが「僕の仕事当ててみてよ」ってダル絡みしてきて、最後まで当てられなかったから「じゃあ特別に教えちゃうね、おじさん霊能者なの。お祓いとか呪いとかやってんの、こう見えて結構凄腕で怖い人なんだよー」って言うの。
うわぁスピかよって思ったけど顔には出さずにすごいですねぇとか適当に相槌打ちながら飲ませ続けて、ベロンベロンになったところで財布をいただいて退店したの。
で、裏路地で財布の中身確認して札だけ抜こうとしたのね。20万くらい入ってて激アツじゃんって喜んだんだけど、なんか変な紙切れが札の中に紛れてて。なんとなく手に取ってみたらさ、目玉のマークがぎっしり書かれてんの、めっちゃキモいーと思ってパッて捨てて、財布もいつも通りゴミ箱にポイしてその日は帰ったのよ。
そしたらさ、朝起きたら目玉の刺青が一個できてたの。女の勘でピンときたわ、あの霊能者の呪いだって、財布盗んだ私を呪ってんだって。
ただ、呪われたといっても刺青が一個できただけで、体調とか悪くなったわけでもないから、その日もまたいつものように稼いでたのよ。そしたら翌朝また刺青が増えてるの。盗みをしなかった日は刺青は増えなかったからきっとこれは盗みをする人間に対する呪いなのよ!マスター、信頼できる霊能者とかいないの?」
「なるほど・・・お力になりたいのは山々ですが、生憎信頼できるような霊能者の知り合いはおりませんねぇ。とりあえず盗みをしなければ増えないのであれば、もう盗みから足を洗ってはいかがですか?」
「無理よ!今の私の借金いくらか知らないでしょ。こんなにがんばってるのに全然減ってないのよ。もうまともな仕事じゃいくら働いても返しきれない額になってるんだから!」
「心中お察しします。私の方でも信頼できる霊能者の心当たりができましたらご連絡いたしますから、今日はもうお帰りになられたらどうでしょう。お代はこちらで持たせていただきますので」
「マスター・・・ありがとね、今日は帰るわ。無理なお願いしてごめんね」
「いえいえ、人には言えない悩みを聞くのもバーテンの仕事ですから。おやすみなさい」
「ええ、おやすみ」

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