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ヒトコワ

prudence1968さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

背負っていたもの
短編 2026/06/09 23:06 106view

3泊4日の出張を終え、理沙(仮名)は疲れた体を引きずるように家路を急いだ。
半年前に引っ越した新居(と言っても古い賃貸マンションなのだが)は、理沙にとって2年ぶりの安息の場となっていて、一刻も早く帰宅して体を休めたかった。
安息の場になっていたのは、ストーカーと化して執拗につきまとっていた元彼を、電話も替え転職までして巻くことができたからだった。

マンションに着くと、玄関前に男物のデッキシューズが、爪先を玄関の方に向けてピッタリ揃えて置いてあった。
その不自然な光景に一瞬体が硬直したが、辺りを見回すと2軒隣の玄関前に靴が干しっぱなしにされているのを見て、多分そこの住民のもので、子どものいたずらか何かだと思いデッキシューズをそっと返しておいた。

その後、元彼が現れることも連絡が来ることもなく、心穏やかに理沙は暮らした。
男性不振に陥っていたので、彼氏はつくらないままだった。
2年ほど経ったある日、理沙は新調したクローゼットを寝室に置くついでに、友人の手も借りて部屋の模様替えをしようとした。

セミダブルの収納式ベッドのケース(引出し)は床に置くタイプで、それまではベッドの右側面を窓際の壁にくっつけ、左側の下にケースを収めていた。
今度は窓から離れた方の壁にベッドの左側面をくっつけ、右側の下にケースを収納することにした。
ところが、右側にケースを収めようとしても、何かに引っかかってうまく収まらない。

おかしいと思い、ベッドの右下を覗いて見ると、ベッドの裏側に寝袋みたいな物に入った何かが張り付けてあるのが見つかった。
寝袋みたいな物の中には、さらにビニール袋に入れられた何かがあった。
それは、言わば“真空パック”にされた元彼のタヒ体だった。
タヒ体は内臓なども取り除いて防腐処理した上で、カラカラに乾燥されミイラ化していた。
重さは18kgほどしかなかったというから、ほぼ絶乾だっただろう。

タヒ体の口の中から遺書が見つかり、「これで理沙と永遠に一緒だ」みたいなことが書かれていた。

元彼のミイラ化を手伝った犯人の供述によると、
・全て元彼の男から頼まれた
・理沙の転職・転居は初めから元彼は知っており、その怒りと落胆でミイラになって理沙の傍にいることを選んだ
・共犯者に理沙の行動を把握させ家を空けることがあれば、部屋に侵入してミイラ化した自分をベッドの下に張り付ける計画だった
・もし理沙がベッドを替えていたり捨てていたりしたら、押し入れの天井裏にタヒ体を”安置”するつもりだった
・玄関前に靴を揃えて置いたのは自タヒ者の儀式のつもりだった
といったことだったようだ。

理沙はこのマンションを安息の場として2年半暮らして来たが、まさか毎晩元彼のタヒ体を背負って「安眠」していたとは。
気がふれてしまった理沙は、いまだ病院から出られずにいる。

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