未だに謎なエピソードがある。
七夕の時期だな。
出張先のホテルに短冊をぶら下げられるスペースみたいなのがあったんだよ。
植木鉢に植えられた、手頃なサイズの木があってさ。
植木鉢の近くには短冊とペンが置かれていて、誰でも自由に書けるようになっていて、
「契約が取れますように」とか、
「○○ちゃんと付き合えますように」とか。
こういうお願いに交じって、たま〜に、
「課長が死にますように」
「○○がクビになりますように」
みたいなのもあってさ、
こういうの見るの結構好きなんだよね。
2週間くらいそのホテルに泊まって仕事してたから、ホテルに帰ってくるたび見てた。エレベーターホールに置かれてたから、エレベーターが来るまでの間に。
で、出張ももうすぐ終わるって頃に、せっかくだからと遅くまで飲み歩いて、夜中にホテル帰ってきたんだよ。
そしたら短冊の木の周りに、今まで飾られてた短冊がめっちゃ散乱してた。誰かが強引に木から引っ張って取って、その辺に投げ捨てたみたいに。
ただならぬ雰囲気だったから、一体なんなんだ?って思って、木の方を見た。
物凄い数の、真っ赤な短冊が木にぶら下がってた。
何が書かれてるのか気になってみちゃった。
その短冊、全部同じ文言でさ。
『田島亮吾、事故死』『田島亮吾、事故死』『田島亮吾、事故死』『田島亮吾、事故死』
って。俺の名前。
俺、事故って死ぬのかな。
あのホテルには一体何が泊まってたんだ。
[完]
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