中学生くらいのとき、寒い冬の日のことです。
学校から帰る途中で雪に降られて、私は凍えながら家に帰りました。
まず居間のストーブをつけて、こたつの電源を入れて。
ストーブの前で凍えた手足を温めてると、ようやく震えが止まりました。
やっとひと息ついて、こたつに入ろうと思って振り返ったんです。
そしたら、こたつ布団の端っこからちょこんと足が出てるのが見えました。
布団が少しこんもりしてて、誰か潜り込んでるみたいでした。
私、弟だなって思ったんですよ。
小学生の弟はよく、こたつの中に潜ってゲームしたり、
そのまま寝ちゃったりしてたんです。
汗びっしょりになって母に怒られても、全然懲りなくて。
だからそのときも、
「あー、もうまた潜ってんのか」って笑いながら、
私も足を突っ込みました。
……ムニッ。
何かに当たったんです。
やわらかくて、湿ってて、生ぬるい感触。
思わず「ごめん!」って言いながら、こたつ布団をめくりました。
──誰もいませんでした。
中にはヒーターのオレンジ色の光が、ぼんやり灯っているだけ。
空気はじんわり暖かいのに、全身に鳥肌が立って。
だって、さっきの感触、布でもテーブルの脚でもなかったんです。
確かに“人の肌”みたいな弾力と生ぬるさが指先に残ってるんです。
ムニッと、少し軟骨みたいなものが動いた感じ。
近くに濡れた柔らかいものがあって、その奥に小さく硬いものが並んでて…
……あれ多分、鼻と口だったと思います。
それから私は、こたつに足を入れるとき、ゆっくり入れるようにしてるんです。
また誰かの顔、蹴っちゃったら嫌ですからね。





















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