葬式であつた後味の悪い話

グエン・ハン・イッチの証言

「え、C太が死んだって！」
ゴールデンウイーク中、オーレンカと観光目的で日本に滞在していた俺‐グエン・ハン・イッチ－は喪服に着替えて葬式に参加した。当然、オーレンカも参加することになっている。なぜなら、親友のA助は俺の彼女に会いたがっていたからだ。C太とは俺の親友、A助の息子である。A助と朝の散歩中、車にはねられて死んだのである。俺とオーレンカはC太の葬式会場に着くとA助やA助の両親、大学生の弟、D男に挨拶をした。A助は
「グエン来てくれたのか・・・そちらさんは」
「俺の恋人のオーレンカだよ」
「ああ、グエンが以前から言っていた彼女さんか・・・。よく来てくれたね」
「それはそうと、B子(A助の奥さん)は？」
「あいつは今、キャンプに行ってやがる。連絡してもなかなか電話に出ないんだ」
「なんて奴だ・・・。B子は昔からC太に関しては育児放棄気味だったからな。ま、B子ならやりかねんワケだがな。それにしてもB子の両親もかなりやばいな。孫のC太が死んだのに、他の親族とペラペラ、談笑しているし・・・。それにA助は知らないと思うが、前々からB子はどこか異常な所があったんだ」
と俺と会話した。B子は昔から異常極まりない思想の持主であった。俺の知り合いの金髪ロリ店長が父親である先代店長と日常的に性行為を行っているのを「異常きわまりない行為」と一方的に決めつけていたのだ。とくに外国人に対して偏見を持っていたのである。多分、B子のやつは俺がオーレンカと付き合っていると知ると、滅茶苦茶ブチ切れるであろう(なぜなら、B子からしてみれば外人の女と交際することが「異常な行動」であるからだ)。マリファナ(大麻)を吸っていたB子の両親は俺とオーレンカの方を見ると、つかつかとやって来た。B子の母親は
「あら、グエンじゃない？あんた、日本に戻って来たのかい。そちらの女性は？」
とオーレンカに絡んでくる。なお、B子の母親は近所の子供や若者相手にマリファナを売って生計を立てているのだ。こいつの脳みそからしてみたら「マリファナは合法」という事になっているのだ。オーレンカは

「あたい、オーレンカ。グエンと付き合っていまーす」
と答える。そんなオーレンカを見て、B子の母親は眉をしかめた。俺はこの時何か嫌な予感がしていた。オーレンカは肩をすくめながら
「こんな時にチャールズ・ブロンソンのようなヒーローがいてくれたらなあ・・・。あたい、グエンに薦められて日本製の「スカッとする話」見たけど、何か物足りないのよ。やっぱりブロンソンのようなタフガイが出てきて、クソ上司や汚嫁、間男、泥ママをぶち殺す方が面白いのに・・・」
と呟く。ちなみに「スカッとする話」を知人に見せたが
「このやり方じゃあまりカタルシスはありませんよ。ブロンソンやクリント・イーストウッド、チャック・ノリス、スタローンのようなアクション映画のヒーローみたいに主人公(イッチ)が悪役相手に徹底的に暴力振りかざして解決した方が受けが良いんですよ。汚嫁とは離婚して慰謝料とるじゃなくて、汚嫁に保険金をかけた後、事故に見せかけてぶっ殺すとかね。まぁ、一度、俺が考えた「スカッとする話」を製作して投稿してみますか、はははッ」
と言っていた。

さて、C太の葬式の最中、A助のスマホから連絡があった。B子からである。A助はスマホで怒鳴りまくっていた。そりゃそうだ、息子が死んだっていうのにキャンプに言ってやがるんだから・・・。A助とB子がスマホで会話している時、
「は？グエンの彼女の事で話がある？お前何言っているんだよ。いいからさっさとA斎場に来い！」
と言う会話も聞こえたが、俺は気にしないそぶりをしていた。A助の弟、D男は
「グエン、お久しぶりです。兄からグエンの彼女さんの事を聞かされたけど、結構美人なんだな」
と話しかけてくれた。葬式を終えると、俺たちはA斎場に向かうマイクロバスに乗り込むときであった。B子がやって来たのである。キャンプから帰ってきたB子は息子が死んだというのにヘラヘラ笑いながら、A助に声をかける。A助とD男はそんなB子の態度にブチ切れ寸前であった。なお、B子のやつ
「グエンの今後の事で相談したことがあるわ」

等と言っていた。B子は袋からマリファナを取り出し、マリファナをふかし始める。さて、俺たちはマリファナの煙まみれになったマイクロバスでA斎場に行くと、C太を火葬している間、俺たちは昼食をとっていた。B子と両親は
「ちょっと、グエンの事で相談があります。グエンが現地妻(オーレンカの事)を連れ込んでやがります。私はグエンが現地妻と結婚するのはめっちゃ反対しています！」
と言い始めたのだ。A助の親族やB子の親族は俺やオーレンカの方を見る。俺は
「はぁぁぁぁぁぁ！？お前、こんな時に何言っているんだよ！そもそもてめぇ、息子の葬式そっちのけでキャンプ行ってやがったのに！空気読め、バカ女！」
と反論する。B子は
「人我を侵さざれば、我人を侵さず。人もし我を侵せば、我人を侵す」
とぽつりとつぶやく、このB子の発言で場は凍り付いたのは言うまでもない。そこから、A助の親族とB子の親族による俺とオーレンカ叩きになったのは言うまでもない(流石に息子を亡くしたA助は叩きに参加しなかったが・・・)。A助の両親とD男は
「グエン、現地妻と結婚するのは考え直しなさい！Y国で暮らすよりこの日本で暮らした方がいいじゃないか！」
「そうだ！グエンはY国に行ってから何か可笑しくなったんだ！」
と批判し始めた。いや、あんたら、むしろB子の方を批判しろよ！そんな時、どこから悲鳴が聞こえた。俺はトイレの方に向かう
「なんて事だ・・・」
トイレの個室でA助が首を吊って死んでいた。そんな状況でもB子は
「A助、死んだん？よっしゃー、A助の財産は全部あたしのモンだ！」
とガッツポーズを決めていた。俺はもうA助の両親やB子とは関わってはいけないと思った。