そのバスは真夜中に止まる。
虫の鳴き声と、木のせせらぎをかき分けて止まる。
繁華街、酔っ払いの背後からいつの間にか現れる。
静かな住宅街の中、音もなく走ってくる。
あなたの目の前に、いつの間にか出現する。
運転手の愛想はいい。常に笑顔を絶やさない。
乗客が乗ってきた時も、
運転している時も、
乗客が降りていく時も。
フロントガラスに鳥がぶつかって、
グチャりと音がした時も。
バスの中にいる大きな虫がブンブン飛び回ってうるさい時も。
人型の何か大きなものを轢いた時も。
ずっと笑顔で、ニコニコ対応している。
目的地は地図には載っていない。
あなたはいつの間にかバスの中に居て座席に座っている。
あなたを乗せたバスは出発し、暗闇を進む。
切れかけて点滅している街灯に照らされて、バスは進む。
赤の点滅信号が照らす、車の居ない交差点。
人気の無い裏路地。
光を忘れた山間道。
舗装されていない砂利道。
樹海。
道と呼べないような場所でも、バスは迷うことなく進む。
度々停車するバス停には、何人かの乗客が降りる。
降りていく乗客は皆愛想がいい。
ニコニコと笑顔で、ありがとうございました。と、運転手に一瞥して降りていく。
町外れの寂れたベッドタウンでスーツの男が。
ドブの匂いのする路地裏では制服を着た女の子が。
廃病院前で焼けただれた顔の老婆が。
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隠していた文字は何ですか?
暗示にかかりやすいみたいだけど、「読まないで下さい」と言われたから、かえって好奇心をそそられちゃいました。