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不思議体験

しゃくたんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

どこにも行けない
短編 2025/09/19 09:41 884view

大学に入って一人暮らしを始めたぼくは、アパートの部屋で奇妙なことに気づいた。

壁に貼られた画鋲の穴が、どういうわけか日ごとに増えていく。

はじめは気のせいだと思っていた。前に住んでいた人がつけた穴だろうと。

でも、ある朝、目覚めると、ベッドの真上の天井に、真新しい画鋲の穴が一つ増えていた。

ぼくは驚いて、そこにカレンダーを貼ってごまかした。

それから、小さな違和感が重なり始めた。

玄関のドアを開けようと鍵穴に鍵を差し込むと、ほんの一瞬だけ、鍵が違う形に変わったように感じることがあった。

スーパーの帰り道、いつも通る道なのに、ふと見ると見慣れない建物が建っていた。でも、二度見ると、それはいつもの風景に戻っていた。

友人に話しても、「一人暮らしで神経質になってるんだよ」と笑い飛ばされるだけだった。

ある日、ぼくは部屋の壁に、無数に増えた画鋲の穴を数えてみた。

ぼくがこの部屋に住み始めてから、すでに百個を超えていた。

そのとき、隣の部屋の壁から、コンコン、とノックする音が聞こえた。

ぼくは壁を叩き返した。コンコン。

すると、隣から、コンコンコン、と返ってきた。

規則的なリズムが不気味に感じて、ぼくはノックをやめた。

だが、隣のノックは止まらない。

コンコンコン、コンコンコン、と、ぼくの心臓の音に合わせて叩かれているような錯覚に陥った。

恐ろしくなったぼくは、部屋を飛び出して友人の家に転がり込んだ。

数日後、恐る恐る自分の部屋に戻ると、玄関のドアに、ぼくの名前が書かれたメモが貼られていた。

「お帰りなさい」

不気味に思いながら、ぼくは鍵を開けた。

だが、その鍵穴は、ぼくの鍵とは違う形に変わっていた。

無理やり鍵を押し込むと、鍵は折れてしまった。

仕方なく、大家さんに連絡を取ろうとスマホを取り出すと、画面がぐにゃりと歪んだ。

そして、画面いっぱいに、無数の画鋲の穴が映し出された。

その穴の一つ一つから、ぼくの顔が、歪んだ笑顔でこちらを覗いている。

ぼくは震えながら、壁に背を向けた。

その瞬間、ぼくの背後で、コンコン、とノックする音が聞こえた。

振り返ると、壁に無数の画鋲の穴が空いている。

その穴の一つが、まるで眼のように光っていた。

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コメント(1)
  • なんか見たことあるな草

    2025/09/19/15:56

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