そこは川の土手だった。
川を跨ぐ鉄道が立ち塞がり景色を切り取っている。
対岸には群青の空に一際輝く星が一つ。
月が水面に落ちて歪んでいる。
両岸の家々から漏れる暖かい光がアスファルトに影を伸ばす。
遠くのビル群は目を光らせてこちらを見つめている。
電車の音が遠くから近づいて来る。
コツコツとヒールが地面を叩く音が冷たく私の背中に染み込んだ。
その音が私の背後で止む。
振り向くと月を切り取ったようなナイフが私の胸に突き刺さっていた。
車窓の光で足元の影が忙しなく揺れる。
対岸の星が爛々と輝いている。
電車の残響が私と共にどこまでも暗い奈落に落ちていった。
私は死んだのだ。
そう思った。
目を覚ますと汗が額を伝う感触がした。
部屋は白く照らされ、靄がかかった意識が急浮上した。
目覚まし時計が騒ぎ出す時間よりもまだ早かった。
それでも不思議と目が覚めていた。
また、あの夢だ。
私が何処かで死ぬ夢。
その景色はなぜか見覚えがあった。
何回目だろうか?
死ぬ夢は「変化」や「区切り」の象徴らしい。
昨日ベッドに入った私とこれから朝の支度をする私は何か違うのだろうか。
断言できないけど、私は私のままだ。
「区切り」はもっとピンとこなかった。
朝ごはんを乗せた白いプレートに何の料理が乗っていたかも覚えていなかった。
何回も同じ夢を見ていると、どうしてもその場所が気になった。
友達の顔が頭の中に浮かんできた。
そういえば、深雪は美術部だ。
夢の景色を絵に描いてそれを頼りに「あの場所」を探せるのではないかと思った。

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。