私は特異性の高い事件や、様々な人の奇妙な体験を記録する仕事をしている。
そういう人々の話す、幽霊、祟り、呪いなんてものは特殊な精神状態に陥った人間が作り出す幻だと思っていた。
だが、今は違う。
私にも子供の形をした何かが見えるようになってしまった。
あれは、私の脳が作り出した幻などではなく、現実的に世界に干渉していた。
子供に選ばれて殺されれば、その真実は闇に葬られ、この世界に謎の死体が一つ生まれることになる。
殺人を行うのは私なのだが。
それを知るのは子供と私以外この世界にいない。
そこで、私はこう思った。
私に殺された人々は私に殺されたことを分かっているのか?
それすら、この子供の改変によって無かったことになるのか?
数々の記録が彼岸の存在を示している。
以前の私であれば、死ねば全てが無に帰ると思っていた。
彼岸に死んだ人々が渡っているのであれば、私が殺した人々に問うてみたい。
「あなたは誰に殺されたのですか?」
その答えを聞いて私はどう思うのだろうか。
私は彼岸を体験した記録をいくつか漁った。
臨死体験。
生体機能的に戻れない可能性が高い。最後の手段だろう。
対岸にアルコルが灯る川渡り。
場所と条件を調べるのが面倒だが、候補には入れておこう。
特定の手順で6度目に乗り換えた電車が異界に繋がる。
面倒くさい手順だが、実行可能ではある。
これも候補に入れておこう。
雨の帳の向こうから現れる人物との邂逅。
条件が受動的すぎる。
こんないつ現れるか分からないやつを待っていられない。
異界に繋がる部屋。
居住する必要がある。
経済的に優先度は下がる。
























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