ある人が、松の枝で首を吊ったとしましょう。
それから数百年、誰にも見つからなかったとしたら、どうなると思いますか?
きっと、木の成長に合わせて、その人が吊るされた枝も、高い位置に移動するはずです。
私の友人は、まさにそんな境遇の幽霊について、語ってくれました。
その友人は、児童養護施設で暮らしていたそうです。
彼を仮に、Aとしましょうか。
Aは幼い頃からオカルトに傾倒し、周りからは変わった子だと思われていたそうです。
しかし、彼のマニアックな知識に興味を持つ者たちも少なからずいたらしく、本人はそれで困ったことはないようでした。
通っていた小学校で、たまに段数の変わる階段を見つけ、校長先生に本当だと認められた逸話まであるとのことです。
我ながら嘘くさい話だとAは言いますが、与太話ばかりしてくるのはいつものことなので、私は気にしていませんでした。
しかし、そんなAの与太話の中でも、これだけはどうにも気味が悪いというか、私としては本気で恐ろしかった話があるのです。
Aはその話を、酒の席でしてくれました。
Aは、同じ施設にいたという、霊感のある女の子に、こんなことを言われたそうです。
施設の裏庭にある、見上げるような松の木には、頭がヒモで繋がった女の人がいると。
その女の人は、他の人には見えない幽霊で、同じ事を施設の先生も言っていると。
そのヒモっていうのは、松の枝と繋がっているようで、幽霊の頭から生えているようでした。
私はその話を聞かされたとき、こう返しました。
「なあA。それって、ひょっとして首吊りなんじゃないか? 失恋なんかを苦にして死んだ、女の霊なんだろう」

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。