奇々怪々 お知らせ

心霊

コンポジットボウさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

施設の松の木
短編 2025/06/08 14:36 1,395view

Aはそう聞き返す私に対して、へらへらと笑いながらこう答えます。

「さあねぇ。もしかしたら、松の精霊かもしれないよ? 霊感少女は、首吊りなんて一言も言ってない、それにね――」

「それになんだ?」

またしても聞き返す私に、Aの方は、今度は趣味の悪い冗談で返してきます。

「考えてもみなよ。見上げたら首が痛くなる高さに、その女はぶら下がってるんだ。わざわざそこまで登って首をつったって言うのかい? これから死のうってやつにしちゃあ、ずいぶんと気合いが入ってるね」

Aは言いながら、ジョッキに入ったチューハイを一気に飲み干しました。
こんな話をしながら、ケラケラと笑うAは、私としては幽霊よりも怖かったです。
その言葉の続きを聞くまでは、ですが。

「まあ、あの女が数百年、成仏せずに苦しみ続けているなら話しは別だ。きっと、木の成長に合わせて、あいつが吊られた木の枝も、高い位置に移動するはずだからね。いやー、お化けが痛みや苦しみを感じるのか、本人に聞いてみたいよ」

Aの言葉に、私は曖昧に笑い返して、ビールのグラスを煽りました。
それからも、Aはたびたび私に与太話を聞かせてきましたが、この男があんなに不気味に感じられたのは、あとにも先にもこのときだけです。

2/2
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。