Aはそう聞き返す私に対して、へらへらと笑いながらこう答えます。
「さあねぇ。もしかしたら、松の精霊かもしれないよ? 霊感少女は、首吊りなんて一言も言ってない、それにね――」
「それになんだ?」
またしても聞き返す私に、Aの方は、今度は趣味の悪い冗談で返してきます。
「考えてもみなよ。見上げたら首が痛くなる高さに、その女はぶら下がってるんだ。わざわざそこまで登って首をつったって言うのかい? これから死のうってやつにしちゃあ、ずいぶんと気合いが入ってるね」
Aは言いながら、ジョッキに入ったチューハイを一気に飲み干しました。
こんな話をしながら、ケラケラと笑うAは、私としては幽霊よりも怖かったです。
その言葉の続きを聞くまでは、ですが。
「まあ、あの女が数百年、成仏せずに苦しみ続けているなら話しは別だ。きっと、木の成長に合わせて、あいつが吊られた木の枝も、高い位置に移動するはずだからね。いやー、お化けが痛みや苦しみを感じるのか、本人に聞いてみたいよ」
Aの言葉に、私は曖昧に笑い返して、ビールのグラスを煽りました。
それからも、Aはたびたび私に与太話を聞かせてきましたが、この男があんなに不気味に感じられたのは、あとにも先にもこのときだけです。
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