これは、昔、本当にあった話です。
自分でも、たまに夢だったんじゃないかと思うくらい、変な出来事でした。
──当時、心霊スポット巡りにハマってたんです。友人と一緒に、廃墟とかトンネルとか、ネットで噂されてる場所を片っ端から回ってました。
ある日、とある廃ビルで三人組の男たちと出会いました。歳も近くて話も合ったので、それからしばらくは一緒に行動するようになりました。
ただ……彼ら、どこに行ってもケラケラ笑ってるんですよ。廃トンネルでも墓地跡でも、ずっと楽しそうに。こっちは静かな空気を感じたいのに、あの笑い声がなんだか台無しで……結局、少しずつ距離を取って、自然と連絡も途絶えました。
で、たしか一年くらい経った頃だったと思います。急に、そのうちの一人から連絡が来たんです。ちょっと迷ったけど、懐かしさもあって、もう一度だけ一緒に行ってみることにしました。
行き先は──県境にある古いトンネル。白い服の女が出るって噂の場所で、前にも行ったことがありました。
「また、あそこか……別の場所にしない?」って俺が言ったら、向こうは笑いながら「いや、最近あそこ、女の霊じゃなくて“別の何か”が出るらしいよ」って。
その“何か”って言い方が、妙に引っかかったのを覚えてます。
夜になって現地に着いて、懐中電灯で足元を照らしながらトンネルの中へ入ったんですが、湿った空気は昔と同じでした。で、しばらく進んだところで、ふと前方に人影が浮かんだんです。
白い服の女でした。うつむいて、じっと立ってて……噂どおりの姿でした。
俺も友人も固まったまま動けなかったんですが、三人組のやつらは──見た瞬間に腹を抱えて笑い始めたんです。あのときの笑い声、今でも耳に残ってます。
「……なあ、ちょっとおかしくないか?」
そう言った直後、女が叫びました。低くて濁った、男とも女ともつかないような声で。トンネルに反響して、どこから聞こえてるのかも分からなかった。
すると、三人組はその場にしゃがみ込んで、今度は高い声で笑い続けたんです。引きつったみたいな声で。苦しそうに。止まらないみたいに。
「これ……ドッキリとかじゃないよな?」って隣の友人に訊いたけど、彼は黙って首を振っただけでした。
で、もう一度そっちを見たときには、誰もいなかったんです。女も、三人組も、全部、きれいに消えてて。
音が、なかった。風も虫の声も、自分の足音すら聞こえなくなって。やけに心臓の音だけが響いてました。
俺たちは何も言わず、無我夢中でトンネルを走って抜けました。
──それっきり、三人組から連絡が来ることはなかったです。電話もSNSも、どこにも痕跡が残ってなくて。
でも、一度だけ。深夜の公園で、ベンチに並んで座ってる三つの影を見たことがありました。
背中しか見えなかったけど、なぜか、ああ、あの三人だって思いました。
……誰ひとり、振り返りませんでした。























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