第二話 一難去ってまた一難
『その話私にも聞かせてくれないか』
ノックもなくトレンチコート姿の男が入って来た。
『警視庁の納屋警部だ』
アニメでお馴染みの警官にそっくりだった。眉毛つながりでなく四角い顔の方だ。
『警察が何の用です』
俺はもう犯罪者でないから怯える必要はない。
『君は奇跡の男だそうだな』
地方新聞まで目を通すとは警察も暇だな。
『回復力が速いのは犯罪ですか?』
警部の目がキラリと光った。
『落雷があった日に歩行者天国を刃物を持った男が徘徊(はいかい)していると通報があった』
凶器を持っているところを誰かに見られていたのだ。
『それが俺と関係ありますか?』
俺は警部に言った。
『通報者が新聞に載った奇跡の男に似ていると証言している』
俺は冷や汗をかいた。取材なんて受けるのではなかった。
『あの日君が歩行者天国にいたのは間違いない』
一難去ってまた一難だ。せっかく通り魔事件の犯人にならずに済んだのに、このままでは未遂犯として逮捕されてしまう。
『ツルルルル』
その時、警部の電話が鳴った。
『緊急事件だって!?』
警部は病室のテレビを点けた。するとライフルを持った犯人による立て籠もり事件が放送されている。
『直接現場に向かう』
警部は『まだ終わったわけではないからな』と言い残すと病室を飛び出して行った。重大事件が起きたので俺のことは後回しのようだ。
ニュースでは『犯人は交通事故で妻と娘を亡くし自暴自棄から犯罪に走った』と言っていた。
俺も引き込もりから自棄(やけ)になって刃物を振り回したから他人事ではない。
『この犯人、大崎先生に似ている』
まだ病室にいたHが言った。
『歩行者天国で目撃された刃物男はこいつじゃないの?』























投稿者のグレートリングです。
納屋警部の名前はルパン三世の銭形警部の初代声優納谷悟朗から付けました。
↑そうなんだ!