Hは推理力を披露したがそれは的外れだった。刃物を持っていたのは俺だからだ。
しかしそのとき俺の脳裏に閃くものがあった。
『上手く行けば両方解決できるかも知れない』
俺はHの言葉からあるアイディアを思いついたのだ。
『スマホを貸してくれ』
俺はHに言った。自分のスマホは落雷で壊れてしまったからだ。
『○△□●』
俺が合言葉を唱えるとHのスマホが鳴った。
『もしもし死神か?』
俺は死神と別れるとき連絡方法を教えてもらった。俺が合言葉を唱えると折り返し電話が掛かって来るのだ。
『しかし死神もハイテクになったものだな』
俺は死神に現在の状況と人質事件のあらましを伝えた。
犯人の名前は板倉コージ。38 歳。
夫婦と娘の3人家族だったが、ある日買い物に出掛けた妻と娘が居眠り運転のトラックに轢かれて帰らぬ人となった。
運転手は業務上過失致死傷罪で逮捕されたが、それでは満足できない板倉は運転手の勤め先の運送会社にライフルを持って立て籠もったのだ。
そして警察に人質の解放と引き換えに運転手の引き渡しを要求している。
『きっと家族の復讐を果たしたら自分も死ぬつもりだ』
『馬鹿な男だ。自殺しても死んだ家族のところには行けない』
電話の向こうで死神は言った。
『あの世に行くには人力車に乗って三途の川に架かった橋を渡らなくてはいけない。しかし自殺した者は人力車に乗せない決まりだ』
あの人力車はそんな重要な役割を持つアイテムだったのか。
『それなら自殺したらどこに行くんだ?』
俺は死神に尋ねた。
『地獄だ』
死神は冷たい口調で答えた。






















投稿者のグレートリングです。
納屋警部の名前はルパン三世の銭形警部の初代声優納谷悟朗から付けました。
↑そうなんだ!