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グレートリングさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

死神の副業 リクエスト通りの走馬灯
短編 2025/01/26 06:59 659view

第二話 リクエスト通りの走馬灯

『走馬灯とは死の瞬間に人生のすべてを見ることです』

男は説明を続けた。

『走馬灯なら知っているが、それがどうして見返りになる』

歩行者天国での凶行なんて振り返りたくもない。あんな事やりたくてやったわけではないからだ。

『それならどんな事をしたかったのですか?』

男は俺の内心を読めるようだ。

『今さら後悔しても意味がない』

俺の人生はもう終わったのだから。

『走馬灯の中ならまだやり直すことができます』

俺は『えっ』と言った。

『ただ夢を見るだけでなく他人と話したり触れあったりも可能です』

『でも一瞬で終わるんだろう』

走馬灯とはそういうものだと聞いている。

『お望みならリアルタイムの速度で再生します』

俺は迷った。どうせ死刑になるなら寿命なんてあっても意味がない。

『騙しているわけじゃないのか?』

人生をやり直しても結局歩行者天国に行き着くとか。

『リクエストをこれに録音すればいいですよ』

男が名刺を裏返すとそこには炎の灯った蝋燭の絵が描かれていた。

『この絵はあなたの寿命です。蝋燭に向かって望みの人生を吹き込んで下さい』

男は名刺を残して帰って行った。

あいつは本物の死神だったか、それとも死刑囚をからかう悪趣味な暇人なのか?

どちらでもいい。どうせ刑務所では他にすることがないのだ。俺は蝋燭の絵に望みの走馬灯を吹き込んだ。

そして処刑の日が来た。

『大崎、時間だ』

俺は『待ってました』とばかり房を飛び出た。

『ずいぶん威勢がいいな』

俺を連行する刑務官は面食らっていた。こんな死刑囚は珍しいのだろう。

『ガクン』と音が響いて足元の板が外れた。そして首に衝撃が走り俺の体は宙に浮いた。

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コメント(1)
  • 投稿者のグレートリングです。
    北風ちゃんの本名は『喜多村風子』通称はフウコ。今後の作品でレギュラーにする予定です。

    2025/01/26/07:44

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