イリガミ
投稿者:四川獅門 (33)
一、解体作業
人が寄り付かなくなって久しい神社に、雅楽の音色が響く。
紫の狩衣を着た宮司が、祈祷を捧げる。
古い神社の解体作業が始まった。
上田さんはその作業員の1人だった。
「小さい神社っていうのと、ほとんど木製だったので、作業としては楽な方だったんですが━━━」
解体業界には、特殊な危険を孕む仕事がいくつかある。
1つは古井戸を埋める仕事。これに関してはいくつか嫌な話がある。
そしてもう1つは稲荷神社の取り壊し。
これも妙な話が多い。
そして、もう1つ━━━
その現場は6人の作業員で解体が進められた。
〈特殊〉な現場であったため、親方や先輩は少しピリついていた。
その時上田さんは何も知らされていなかったが、いつもと違う空気を感じていた。
「基本的に解体作業の前に、家財道具なんかをを撤去するんです。モノによって分別しなきゃ廃棄できないんで」
上田さんと後輩の西野さんは2人で屋内の神具や祭壇などの撤去作業をしていた。
「後輩が大きい木箱を運んでいたんですが━━━」
埃を被った古い木箱だった。
蓋には筆字で『イリガミ』と書かれていた。
その箱の底が抜けた。
ゴロン、と床に何かが転がった。
「 あっ 」
ボリボリッ
それを西野さんが踏み潰してしまった。
2人が見たのは、床の上でバラバラになった獣の頭蓋骨だった。
上田さんは現場がピリついていたこともあり、見て見ぬフリをした。
お祓いもしてあるし、大丈夫だろうとタカを括っていた。
これからの時代、守る人のいない神社も増えるしこういう話も近場にできそう
動物虐待にもほどがある…
文章がわかりやすい