Bluetooth接続

毎朝、いつものように満員電車に乗り込む。
最近はコロナ前の混み具合に戻ってきたと感じる。

身動きが取れない程の密集でそんな事を考える。

スマホを取り出すスペースも無いので、イヤホンから流れるお気に入りの曲を聴きながら必死に耐える。

曲の隙間から車掌が電車の遅れをアナウンスしているのが聞こえる。
人に圧に潰されながら、電車の速度が上がるのを感じた。

荒い運転に合わせて人の塊は右へ左へひしめき合う。
この地獄はひたすらに耐えるしかないのだ。

イヤホンから流れる音楽に集中する。
曲の盛り上がりに到達する所だ。

心の中でサビを熱唱して、電車内をライブ会場にする。
モッシュで揉みくちゃにされていると思えば、まぁ、悪くないかもしれない。

再度、曲の盛り上がりに到達する直前、ノイズとともに音楽が途切れてしまった。

Disconnect.

Pairing…

イヤホンの切断と共に機械的な声が響く。

…

…

スマホを取りだして調整したいが、身動き1つ取れない。

…

…

Connected.

よかった、繋がったと思った瞬間

ポーーーーっという電子音と共にボソボソとしたアナウンスがイヤホンから結構な音量で流れてきた。

うわっ！
きゃっ！

同じく電車内でイヤホンを付けていたであろう人たちが一切に驚きの声をあげる。

隣の大学生のヘッドホンからポーーーという音が大音量で漏れでている。

みんな同じ所に繋がったのか？

頭も動かせない密集の中、見知らぬサラリーマンに目配せするとどうやらそうらしい。