宅配する猫
投稿者:高崎 十八番 (6)
大学を卒業後、就職にありつけなかった山田さんは、実家で自堕落な生活を送っていた。
両親からは、「いつまでも貴女を養えるわけではない」と口酸っぱく言われる始末であり、家の中ではいつも形見の狭い思いを強いられていたという。
そんな山田さんにとっての癒やしが、自宅で飼っているミィという名の三毛猫であったそうだ。年齢は十歳間近と、そこまで若い猫ではないが、山田さんが可愛がりすぎるあまりに、間食となるお菓子を与え過ぎて丸々と肥えた猫の姿となっていた。
とある日を堺に、何故かミィが山田さんの寝ている枕元に、毎朝プレゼントを届けてくるようになったという。プレゼントといっても、宝石やブランド物のような高価な物ではない。蜥蜴などの爬虫類や飛蝗などの昆虫、溝鼠などの小動物の死骸ばかりであったそうだ。明け方になると、決まってミィは外に散歩に出掛ける。恐らく散歩道にて、猫の狩猟本能が働き、生物を嬲り殺しながら街中を徘徊して、その戦利品として届けてくれているのだろうと山田さんは思った。自宅で自堕落な生活を送っている山田さんを、ミィが気にかけてプレゼントを届けてくれているのかもしれない、そう思ったりもしたそうだ。
しかしミィの狩猟対象は、日を重ねるごとに過激さを増したという。ある日は、子猫の死骸。またある日は、黒い成猫の耳。毎朝、山田さんの枕が赤黒い血で染められており、獣の不快な血生臭さで目が覚めることがしばしばあったそうだ。
ミィのことが心配になった山田さんは、早朝五時に起床し、散歩している後を追ってみることにした。道端に転がっている鳩の死骸には目もくれず、とある老朽化した一軒家へと、何故かミィは侵入していったそうだ。山田さんは、中に入れないため塀の隙間から中を覗いた。すると庭で中華包丁を振りかざし、猫を惨殺している青年がいたという。最初に手足を切断、次に尻尾と耳。バタバタと痙攣する猫の体を青年は力付くで押さえ付けながら、器用に腹を裂いて内臓を強引に取り出した。そして最後に首を切り、猫の生首を黒いビニール袋の中へと放り込んだそうだ。その一部始終をみて山田さんは絶句したという。そんな中、惨殺された猫の臓物を咥えたまま、ミィが近寄ってきた。山田さんは「逃げなきゃ」と咄嗟の判断で、ミィを抱きかかえてその場から早足で去ったという。
それ以降、山田さんはミィを放し飼いするのをやめたそうだ。
すみません、肩身の狭いでは??
怖かったです。