【short_89】総務の山田さん
投稿者:kana (210)
総務の山田は、また朝から社長に怒鳴られていた。
朝一番に出社して、会社の前を竹ぼうきを使って一生懸命履き掃除をし、歩行者がいると手を止めて挨拶し、また掃除に戻って手を動かした。
だが、社長が来るとそんな山田を捕まえて、あそこにもゴミがある、そこにもある、挙句の果てに「ホント使えないやつだな」と、吐き捨てて社内へ消えていった。
ギリギリまで掃除をしていた山田が少し遅れて朝礼に参加した。
それを見つけた社長は山田に向かって烈火のごとく怒鳴りつけた。
朝礼ではまた社長の長話がつづいた。この日も自画自賛に終始し、成功すれば自分の手柄、失敗すれば部下のせいという流れだった。部下の失敗は土下座をさせてクビだと怒鳴りつけるのに、明らかに自分のミスがバレた時は「ごめんなちゃい」と笑ってごまかした。
社員は誰も笑わなかった。
朝礼も終わり、フラフラ歩いていた山田を、また社長が呼びつける。
午後千葉へ遊びに行くから、駐車場にある自分のクルマを洗車しておけという命令だった。
これは洗車機で洗って来いと言うのではなく、手で洗えと言う意味だ。いつもの事だ。
午後になり、社長は太った奥さんを連れて会社を出る。
そして駐車場のクルマを見て驚いた。まったく洗車されていないのである。
「オイ、山田を見つけたらオレが戻るまで帰るなと言っておけ! 躾しなおしてやる!!」
そう近くにいた社員に怒鳴りつけてクルマを出した。
「・・・えっ、山田さんですか??」
社員はきょとんとしながら社長を見送った。
「山田さんなら、先月自殺したじゃないですか・・・社長、ボケたんかなぁ・・・」
社長の乗ったクルマは首都高を走っていた。元来のスピード狂である。次々と追い抜く。
だが、瞬間おかしなものを見た。追い抜いたはずのクルマを山田が運転しているのだ。
「んん?山田・・・」
不審に思いながら走っていると、今度は首都高の隅を竹ぼうきで履く山田がいた。
「え、・・・山田?」
山田は竹ぼうき捨て、走って社長のクルマに並走する。
「や、山田・・・山田ぁ???」時速はもう100キロを超えていると言うのに・・・。
会社の電話が鳴る。取った社員が思わず立ち尽くした。社長の乗ったクルマが首都高で横転、炎上し、社長夫妻が亡くなったという警察からの知らせだった。
記念すべき200話目ですね。おめでとうございます。そしていつもありがとうございます。
主人公…めっちゃ見ていらっしゃる方ですね。
スカッと…とはいきませんが、これで会社が平穏になることを祈ります…><
↑ありがとうございます。short怪談もいよいよラストスパートに入ります。
これはスカッと