【short_72】バンジージャンプ
投稿者:kana (210)
「こ、今度の日曜日、バンジージャンプしに行きませんか」
ボクは先輩をバンジージャンプに誘ってみた。
当時まだ珍しかったこの遊びは、狂気のチャレンジとして話題になり始めた頃だった。
「ボ、ボクは度胸が無いから足がすくんで動けなくなるかもしれません・・・その時は先輩がボクを後ろから思いっきり突き飛ばしてください! お願いします!」
「よし、わかった!!」先輩はむしろそれがやりたくて参加したようだった。
当日。
山間部にかけられた大きな吊り橋に設けられたバンジー専用の飛び降り口にボクは立った。特殊なゴムロープを足に巻き、いざ下界へ・・・だが、なかなかその1歩が踏み出せない。
「行きます!!」という威勢の良い言葉を何度も吐き、吐いては止まるをくりかえすことすでに10分。そろそろ先輩がイラ立ち始めた。
先輩がボクの後ろに近づいてきた。・・・つまり、次は突き落とすということだ。
「じゃあ、今度こそ、行きます!!」ボクはそう宣言したがやはり最後の1歩が踏み出せない。それに業を煮やした先輩が背中をグイイと押してきた!!
「う、うわぁぁぁぁ!!」ボクは後ろを振り向きながら落下した。
落下する時に、あまりの恐怖から、先輩の腕をがっしりと掴んでしまった。
そのため、先輩も一緒に落ちた。
もちろん、先輩はロープなど付けていない。
間もなく、先輩はこの墜落事故によって死亡した。
ボクも業務上過失致死ということで罪に問われた。しかし、遊びの中での出来事であり、
恐怖と言う人間の本能の部分から起きてしまった事故であり、しかも被害者本人が被疑者を突き落とそうとして近づいたことにも事故の一因があると言うことで、ほとんど無罪に近いような判決が言い渡された。
「ふぅ・・・フハハハハ」ボクはビルの屋上に一人立ち、笑っていた。
「高い所なんか本当はぜんぜん怖くない。なんならここから隣のビルの屋上までジャンプだってできる。ふふ。とっさに振り返って先輩の腕をつかむ練習・・・何度やったことか。
・・・ねぇ先輩、イジメる相手を間違えちゃいましたねぇぇぇぇ、あっはははは!!」
スカッとしましたね(*´∀`)。