追いかけてくる※※
投稿者:haruton (25)
まだ起きていたのかい?
今日は眠れないのかなぁ?
仕方ないなぁ。
今夜は特別この僕がキミに話を聞かせようではないか。心して聞いてくれよなぁ。
キミはこの〇〇県に引っ越して日が浅いらしいね。ふふふ、僕は色々知ってるよ。
この県には摩訶不思議な者達がたくさん住んでいるからね。
まずは何をはなそうかなぁ。
そうだなぁ。
ある男の話でもしようかなぁ。
その男の名前は忘れたんだよね。イニシャルで呼ぶことにしようかなぁ。
Tと呼ぼうかね。
Tは10歳の頃家族と共に、この県に引っ越して来たんだよね。引っ越しを嫌う人間が大方だと思うけど、Tはその逆だった。ワクワクしていたんだよね。
それは何故かって?
うーん。実をいうとだね……。
Tは引っ越す前の学校に馴染めていなかったんだよね。クラスメートに意地悪されていたんだよ。
まあ、いじめを受けていたんだ。
苛められている子どもっていうのは、大抵黙って耐えているか不登校になるかなんだけれど、Tは親にはっきり苛められていると言えたんだよね。
最初Tのご両親も一応担任の先生になんとかしてもらおうと訴えたらしいけど、その担任がポンコツでね。クラスメートのホームルームでTを苛めるなと言ってしまったんだよね。
このやり方はまずいよなぁ。
ますますクラスメートの、Tに対する態度が冷たくなった。だからTのご両親も環境を変えたほうがいいと考えて引っ越すことを選んだ。余はね、逃げることは決して悪いことじゃないと思うね。話し合いで解決出来ないことなんて沢山あるからなぁ。話をもとに戻すね。
最初はTの親父さんが、この県に越してきた。
そして春になってーー新学期が始まる前の時期に、お袋さんとTがこの県にやってきた。
いよいよこれから住む家ーーといってもアパートだけれどーーTは興奮した。
もうすぐで新しい生活が待っているからね。
Tとお袋さんはついに、これから住むアパートに着いたんだよ。
Tはまじまじとアパートを眺めた。アパートは少し古かったが、ごく普通の外観だった。アパートの周りにはオレンジ色のユリが咲いていて、そのユリの後ろにある柵の隙間から幅が狭い砂利道が見えた。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。