大雨の留守番
投稿者:白と黒の旅人 (33)
ある日、かなりの大雨が降った。予報でもある程度分かっていたので店も学校も早めに閉められていた。
付近の小中高の学校には警報によって下校の指示が出ていた。
さて、私はと言うと店も暇なので家でゲームでもしようと思っていたところ、神主さんの奥さんから「真ん中の子を保育園に迎えに行くから神社の留守番を頼んでもいいか?」と電話が来た。
当時、神主さんは祭事関連で外に出ており、真ん中の子は保育園、上の子は中学上がり立ての女の子、1番下の子はまだミルクを飲んでいる頃といった感じ。
そもそもが互いの家の合鍵を持っているぐらいでほぼ親戚同然の関係だったので一言返事をして受けもった。
手土産にとお菓子などを持っていって、末っ子の赤ちゃんを抱っこしながら1番上の女の子の宿題を見ていた。立地的に言うと神社と繋がる形で倉、バイトの巫女さんなどの準備用の控え室的なものがいくつかあり、そのひとつの別々の部屋に私と赤ちゃん、そして長女が居た。
すると午後5時頃、予報より少し早く大雨が降り出した。護岸工事とかも都市部程しっかりコンクリートでされている場所も少ないので場所によっては公民館に一時的に避難する人もいるぐらいかなりの大雨。
当時ニュースになってたかも。
さて、5時をすぎて6時頃、赤ちゃんのためにミルクを準備していた。
予想通り泣き出したのでミルクをあげたのだがなかなか飲んでくれない。オムツに関しては確認済みだったのでただ知らない人にぐずっているだけなのかと思っていたら本格的に大きな雷も鳴り出した。
ようやくそこでなんとなく察し、「あぁ〜はいはい。カミナリ怖いねぇ〜」とあやしていると今度は別室で勉強していた神社家長女が私のいる部屋にやってきた。
「部屋の軋む音や地鳴りみたいなものがして、危ない気がしてこっちに来た。」とのこと。地鳴りとなると、地すべりや山崩れの可能性がある。
「教えてくれてありがとうUちゃん。とりあえず、荷物をまとめてお社の方に一旦避難しよう。」
本堂というのが正しいのかは詳しく知らないがとりあえずそこが1番神社で頑丈な建物である。移動する頃には雨風や雷も強くなり、赤ちゃんのよりいっそう泣いていた。この時点で長女に赤ちゃんを渡して泣き止むか試してみたのだが泣き止まない。
すると、より一際大きい雷が落ちた。光ってから一秒もたたずに落ちたのでそれなりに近い。
この辺りから異変が始まった。まず、赤ちゃんが泣き止み、周りをキョロキョロしだした。次に長女のUちゃんが泣き出したのだ。
「Uちゃん、どうしたの?」と聞くと「わからない。でも、何故か凄く涙が出てきた。」とのこと。
なんというかアレルギー反応で涙が出ているような感じだった。
また雷がなると赤ちゃんも泣き出し、Uちゃんもとうとう声をあげて泣き出した。
Uちゃんを抱き寄せてどうしたものかと考えているとようやくそこで異変に気がついた。
考えるために意識を2人から外したことで周りを見た時、神社の鳥居の方に目がいった。違和感を感じて少し扉を開けた時後悔した。階段が見えない。モヤとかそんなレベルではなく、神社の向こう側、直径2m程だけが絵の具で塗りつぶしたように黒いのだ。同時に理解した。アレはずっと神社の付近をうろついていた。そして私が扉を開けたことで少なくとも私らアレの起こす現象を認識できると教えてしまったのだ。
「Uちゃん、よく聞いて。何か飛んできたみたいで、外の様子を少し見てくるから。危ないから絶対に出てきちゃダメだよ。構造的に、神様のところが一番安全だろうから、Cちゃん連れてそっちに行っててね。」
仮にも神社の家の子なので私が見たものを私よりはっきり理解している可能性があるのにそんな嘘をついたのか分からないが、私は赤ちゃんをUちゃんに託して、とりあえず、屋根から出ない程度のところから鳥居を見た。
大雨の音に混じって声が聞こえる。「お〜い、入れてくれ〜…」「雨宿りさせてくれ〜……」と言っている。つまり、「神社の中に入れろ」と言っているのだ。普通の人なら入ればいいものを招かれるまで待っている時点でもうおかしい。
視界の端で鳥居を捉えて周りを見ていると「おぉ〜い、O!UちゃんとCちゃんどーしとる〜!?」と私の祖父の声がした。
私の祖父は先代の神主さんの幼なじみ。一緒に将棋などをしているのをよく見かけた。しかし、その時は祖父の声にかなり不信感を持った。というのも祖父は先代の神主さんが現役ならまだしも引退したあとは基本先代さんがいる神社一家の親戚の家(4世代住宅で、神主さんの二つ下の弟さんの家兼神主さんの実家)の方に行く機会が多く、神社に来るならほぼ必ず先代さんがくる。なんなら先々代さんもたまに一緒に来る。
独りで来ることはまずないのだ。
そこでまずは自分のスマホを取り出し、祖父にテレビ電話をかけた。案の定、「ほいほーい、こちら○○の名物ジジイじゃぞ孫〜。」とふざけた返事が来た。
画面にはしっかり和服着た祖父と先代神主がピースして映っている。
「ジィちゃん、先代さん、今神社にいるんだけどコレ見て。」と鳥居の方を見せると先代は「おぉ…なんちゅーことじゃ……!」と慌てたというか怒った様子。
この間も祖父の声真似した何者かの声は聞こえていた。
こういう怖い話好きすぎる
神主一家に纏わる怖い話の投稿ありがとうございます。
御要望ありましたので神主一家さんとガッツリ関わった時のお話投稿いたしました。By投稿者
情景を想像しそうなほどハラハラした。面白い。