魂を持って行かれそうになった話
投稿者:ハイク (5)
私がサービス付き高齢者住宅で働いていた時の話です。
当時99歳になったばかりのおばあさんで、認知症がひどすぎて一度言ったことを瞬間で忘れてしまって何度も延々と聞き続けてしまうような重度な認知症を患っていたおばあさんがいました。
そのおばあさんは都内に勤めていたとか、裁判所でつとめていたとか、夫が戦没者であったことからお金に不自由したことがない人でした。
ただ、自分の子供を親戚にあずけて自分だけ仕事ばかりしていたような人でした。そのおばあさんが全く食べられなくなり、息子をみても誰かもわからなくなり、寝たきりになってからご家族に看取られる状態になりました。
もともと一人でいることが嫌いで誰かが常にそばにいないと気が済まないくらいさみしがりな人だったので、夜も寝られず一人で車椅子で歩いているような人でした。
そんなおばあさんも寝たきりになり一人でご飯も食べられなくなり口に入れても自分から吐き出してしまうくらいになり、家族に看取られ亡くなりました。
私はそのおばあさんを抱えながら水分を飲ませたり、体を動かしながらオムツ交換をしたりだいぶ体に密着してお世話をしてました。(介護職員だったのでそれが仕事でした)
その為亡くなった後、その部屋からおばあさんの遺体が運ばれた後もその部屋の雰囲気がなかなか綺麗にならず、荷物が運び出された後もいつまでも雰囲気が残ったままだったのです。
荷物を家族が運び出しても雰囲気が消えず、逆になぜか私の体が重くなり、肩も背中も重いものがのったような状態になり気持ち悪い雰囲気をもったまま1日2日を過ごしました。
その間、「いやだよーこわいよー」という声が聞こえたような気がして振り返ると誰もいなくて「なんだろう?」と思っても確かに声が聞こえる現象が起こりました。
そしてその声が聞こえたと思ったら今度は体から何かが引っぺがされそうなそわそわしたようなぞくぞくしたような恐怖を感じるようになったのです。
悪寒が走る、というのはこういうことかな?と思いながらも何故か不安な気持ちが押し寄せて、体から軽いんだけどとても大事なものがはがされるような得体のしれない気持ちが続き、そのおばあさんの告別式の時間になるまでずっとその気持ち悪さが続きました。
告別式の時間きっかりになったとたん、その気持ち悪さがとれて、その瞬間宗教歌の「アベマリア」が聞きたくなり、そのCDをかけ始めると、すっと体が楽になりました。
そのおばあさんはキリスト教ではないけれど、もしかしたら母親の腕に抱かれて穏やかに天に上りたかったのかもしれないと今では思います。
一人がさみしかったから私の魂を引き連れていこうとしてたのかな?とも思いました。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。