ケンちゃんクリーニング
投稿者:ねこじろう (147)
【ケンちゃんクリーニング】は地方の商店街の一角にある小さなクリーニング屋さんだ。
縦長の古びたビル。
1階は店舗で、2階の畳部屋には店主のケンちゃんと年老いた母親の2人が暮らしている。
ケンちゃんは50歳。
未だに独身だ。
坊主頭に小柄なぽっちゃり体形で、年がら年中ジーンズのオーバーオール姿をしている。
母親は今年88で足腰は弱り、かなり認知症が進んでいた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
イラッシャイマセ、、イラッシャイマセ、、
呼び鈴代わりの機械的な女性の声が、店内に鳴り響いた。
2階の部屋で母親と二人、朝ごはん食べていたケンちゃんは「は~い」と返事をすると立ち上がり、階段を降りて受付カウンターに立つ。
ピンクのパーカーを羽織る20歳くらいの小柄な女性が携帯を見ながら、無造作に白い紙袋をカウンターの上に置くと、
「今日中で」
とぶっきらぼうに呟く。
ケンちゃんは紙袋の中身を確認した。
ブラウス1枚にジャケットが1枚、そしてパンツが1本だ。
彼は「承知しました」と言って女性の顔を見ると、代金を伝える。
それからレジを打ってお金を受け取った後、「今日の午後4時には仕上がりますから」と言って、何故だか緊張した面持ちで彼女に伝票を渡した。
その右手は微かに震えている。
女性がピンクの財布の中にその伝票を収めている様子をじっと見ながら、ケンちゃんは少し紅潮した顔で語りかける。
「あの、き、今日はいつもより素敵なネイルですね」
その若い女性は一瞬驚いたような顔でケンちゃんを見たが、すぐに無表情な顔に戻り軽く会釈をしてから背中を向け歩きだそうとする。
その時だった。
先ほどまで温厚な表情をしていたケンちゃんが豹変した。
まるで薬物中毒患者のような目で女性を睨み付け、カウンター下の棚にある防犯用のスタンガンを片手に持つと、素早く女性の首筋にあてがった。
パチン!
スタンガンから小さな火花が飛び散り、彼女は声を出す間もなくその場にへなへなとうずくまる。
それからカウンターを乗り越え女性の両手を掴むと、引き摺りながら再びカウンター後方に回り込む。
そして後方にあるドアを開くと、また女性を引き摺りながら、その奥にある部屋に入って行った。
8帖ほどのコンクリート造りの室内中央には、金属の吊し棒が並んでいて、そこには既に仕上がりビニールで包装された服がズラリと吊り下げられている。
「洗濯屋けんちゃん」なら知っていますが‥
文章うますぎます。ひきこまれました。